台湾問題と中国の統一

1993年8月:中華人民共和国国務院新聞弁公室


五、国際事務における台湾との関係の問題

 前述のとおり、世界には只一つの中国しか存在せず、台湾は中国の不可分の一部である。中華人民共和国は全中国人民を代表する唯一の合法政府であり、このことは国際連合および世界各国の普遍的な承認を得ている。国家主権を守り、国家の統一を実現するために、中国政府が国際的な事務処理において台湾との関係の問題を取り扱う場合には、必ず一つの中国の原則を堅持し、また一貫して台湾同胞の利益を擁護してきた。中国政府は、この立場が必ず各国政府と人民の理解を得ることを信じる。

 ここで、中国政府の以下のいくつかの問題についての自己の立場と政策を明らかにしたい。

  (一)中国との国交を持つ国と台湾との関係の問題 。現在、世界中の中国と国交を持つ国家は、国際法と一つの中国の原則を遵守し、中国政府との間の台湾問題について正式な協議と了解によって、台湾のどのような政府間関係をも結ばないことを承諾している。国際法に照らして、一つの主権国家は一つだけの中央政府によって国家が代表されるものであり。台湾は中国の一部分であるから、国際的に中国を代表することはできず、外国との間で外交関係を持ったり、なんらかの政府的な性格を持つ関係を発展させることはできない。但し、台湾の経済発展からの必要性と台湾同胞の実際の利益を考慮し、台湾と外国の民間経済、文化の往来については、中国政府はこれに異議を唱えない。

 この数年、台湾当局はいわゆる「実務外交」の推進に全力を尽くして、一部の中国と外交関係を持つ国家との間の政府関係を発展させ、「重複承認」を進め、「二つの中国」または「一つの中国と一つの台湾」を作り出そうとたくらんでいる。中国政府は断固としてこれに反対する。

 世界中の絶対多数の国家は中国との友好関係を重視し、台湾問題に関して中国との間に取り交わした協議または了解を堅く守っており、中国政府はこれを賞賛していることは、指摘しなければならない。しかし、国際的な信義を顧みず、中華人民共和国との国交樹立時に取り交わした承諾に違反し、台湾との政府関係を発展させ、中国統一事業の障害を作り出している国があることも、指摘せざるを得ない。中国政府は、関係国の政府が十分な措置を採用して、このような所業を改めることを心から希望する。

  (二)国際組織と台湾の関係の問題 。各国の主権は完全で、分割することも、分けて享受することもできない。中華人民共和国政府は中国の唯一の合法政府であり、国際組織において国家の主権を行使し、中国全体を代表する権利があり義務もある。台湾当局はいくつかの、主権国家だけしか参加できない国際組織でいわゆる「一国両席」を行い、まさに「二つの中国」を作り出そうと謀っている。中国政府は、このような行為には断乎として反対する。この原則の立場は、台湾同胞と海外僑胞を含む全中国人民の根本的な利益に符合するものである。一つの中国の原則の立場を前提にすることによってのみ、中国政府は関係する国際組織の性質、定款および実際の状況に基づき、中国政府が同意できる各種の方式により、台湾が国政組織で活動することを可能にすることを考慮することができるのである。

 国際連合関係のすべての機構は主権国家の代表が参加する政府間の国政組織である。中華人民共和国が国際連合の合法的な権利を回復した後、国際連合関連のすべての機構はすでに正式な決議により中華人民共和国が合法的な席次を回復し台湾当局の「代表」を追放した。これにより、国際連合の組織における中国代表権の問題はすでに徹底的な解決が得られており、台湾の再加入の問題はまったく存在していない。最近の一時期以来、台湾当局には、「国際連合への重複加盟」を大いにはやし立てる人がいることも指摘する必要があるだろう。非常に明白なことに、これは国家主権を分裂させようとする一種の妄想的な企てであり、法理的にも実際的にもまったく認められないものである。中国政府は、各国政府と国際連合関係の組織がこのような企てを見破ることができ、中国の主権状況に損害を与えないであろうと信じている。

 その他の政府間組織についても、原則として台湾には参加する権利はない。アジア開発銀行(ADB)、アジア太平洋経済協力会議(APEC)などの地域意的な経済組織では、中国政府と関係者の協議または了解に基づき、明確に中華人民共和国が主権国家として参加し、台湾は中国の一地域として「中国台北」(英文では、アジア開発銀行の場合はTAIPEI, CHINA、アジア太平洋経済協力会議ではCHINESE TAIPEI)のような名称で活動に参加している。このような事例は特別な措置であり、その他の政府間国際組織及び国際活動についての有効な「規範」を構成することはできない。

 民間の国政組織では、中華人民共和国と関係機関との間の協議と了解のもとで、中国全国を代表する性質の組織に中国の名義で参加している状況下で、台湾は「中国台北(TAIPEI, CHINA)あるいは「中国台湾(TAIWAN, CHINA)」などの名称で参加することが適当である。

  (三)中国と国交を持つ国の台湾との通航問題 。国家の領空は国の領土と不可分の構成要素である。1919年に公布された「パリ航空条約」と1944年に締結された「シカゴ条約」では、各国家の領空に対する主権の完全性および排他性がひとしく確認されている。したがって、中国との国交国のいかなる航空会社でも、たとえ私営の航空会社と台湾の通航であろうと、すべて中国の主権に関する政治問題であり、一般の民間関係ではない。当然、中国と国交を持つ国の国営航空会社は台湾との通航を許されないし、民間航空会社が台湾との通航を望む場合には、その国の政府と中国政府との交渉を経由しなければならない。中国政府の同意を得た後、民間航空会社は台湾の私営航空会社との間の相互の乗り入れを始めることができる。実際には、上述の原則に基づき、中国政府はイギリス、ドイツ、カナダなどの国の民間航空会社と台湾の私営航空会社の通航を認めている。

 中華人民共和国との国交を樹立する以前に台湾との通航があった幾つかの国では、中国政府との談判を通して、台湾との通航の国営的な性格を改めた後、民間の商業的な運輸事業を継続できるよう計らわれている。

  (四)中国と国交を持つ国の台湾向け武器輸出の問題 。中国政府は、いかなる国であろうとも、台湾向けの武器装備の輸出あるいは武器生産技術の提供を行う事に対する反対を、一貫して堅持している。およそ中国と国交を持つ国は、すべて相互に主権と領土保全を尊重し、内政不干渉の原則を守り、台湾への武器提供はいかなる口実であろうと行なってはならない。これを否定することは、国際関係の規準に違反することであり、中国の内政に干渉することである。

 世界各国は、特に世界平和の事業に対して重大な責任を負う大国は、国際連合安全保障理事国の関与した通常兵器拡散制限の原則を厳格に遵守し、平和の維持及び地域の安全の育成に貢献するべきである。しかし、当面の台湾海峡両岸関係が日増しに緩和されている状況下で、ある国家は自らが行った国際協議における承諾に違反し、中国政府との幾度もの正式な交渉を顧みず、台湾向けの武器輸出を行って、海峡両岸の緊張状態を作り出している。これは、中国の安全に対する厳重な威嚇であり、中国の平和統一事業に障害を設定することのみならず、アジア及び世界の平和安定に対しても利益を損なうものである。当然、中国人民は強く反対する。

 国際事務処理において、中国政府は一貫して独立自主の平和外交政策を実施しており、「主権領土保全の相互尊重、相互不可侵、内政不干渉、平等互恵、平和共存」の平和五原則を堅持し、積極的に世界各国との友好関係を発展させ、他国に損害を与えず、他国の内政に干渉していない。同様に、中国政府も各国政府に対し、中国の利益を損なわず、中国の内政事情に干渉せず、台湾関係の問題を正しく処理することを要求する。

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