台湾問題と中国の統一

1993年8月:中華人民共和国国務院新聞弁公室


三、中国政府の台湾問題解決のための基本方針

 台湾問題を解決して国家の統一を実現することは、中国人民全体の荘厳で神聖な使命である。中華人民共和国成立後、中国政府はその実現のために、長期にわたり努力し続けてきた。中国政府の台湾問題解決の基本方針は「平和統一、一国家二制度」である。

  「平和統一と一国家二制度」の方針の形成 。早くも50年代に、中国政府は平和方式で台湾問題を解決することを検討していた。1955年5月、周恩来総理は全国人民代表大会常務委員会の会議で、「中国人民が台湾問題を解決する方式は二種類あり、それは戦争方式と平和方式であるが、中国人民は可能な条件があるかぎり平和的な方式を選択して問題を解決することを望んでいる」と提起した。1956年4月、毛沢東主席も、「和を貴とする」、「愛国一家」、「愛国に前後の区別はない」などの政策を主張した。しかし、外国勢力の干渉などの原因により、この主張を実践に移すことはできなかった。

 70年代から、国際情勢および国内情勢の重要な変化が起こり始めた。すなわち、中米外交関係が確立し、関係正常化が実現した。中国共産党は十一届三中全会を開催し、国家の工作の中心を近代化と経済建設に移すことを決定した。これと同時に、海峡両岸の中国人、香港、マカオの同胞、および海外の僑胞、華人はすべて、早期に両岸が手を携え、合作し、共同で中華を振興していくことを、強く希望した。このような歴史条件の下、中国政府は国家民族の利益と前途を考慮し、歴史を尊重し、現実を尊重し、真実を求め、各方面の利益原則を照らし合わせて、「一つの国家、二つの制度」の方針を提出した。

 1979年1月1日、中華人民共和国全国人民代表大会常務委員会は「台湾同胞に告げる書」を発表し、中国政府の平和的な台湾問題解決の基本方針を丁重に宣告し、両岸が軍事対峙状態を終結させて交渉を進めるように呼びかけた。国家の統一実現にあたり、必ず、「台湾の現状と台湾各階人士の意見を尊重し、情を重んじた合理的な政策と方法を採用」すると表明した。

 1981年9月30日、全国人民代表大会常務委員会委員長葉剣英は談話を発表し、台湾問題解決方針の政策について、一歩進んだ解説をした。つまり、「国家統一実現後、台湾は特別行政区を作り、高度の自治権を共有できる」といい、両岸の政権党である国共両党の対等な交渉の実施を提案した。

 1982年1月11日、中国の指導者ケ小平は葉剣英の談話を取り上げて、これは事実上の「一国家二制度」であり、国家が統一実現の大前提の下、国家主体は社会主義制度を実行し、台湾は資本主義制度を実行するものであると指摘した。

 1983年6月26日、ケ小平は台湾と大陸の平和統一構想についてさらに一歩踏み込み、問題の核心は祖国の統一であると指摘した。彼はまた、両岸統一と台湾特別行政区設置の問題について、中国政府の政策を明らかにした。

 1992年10月12日、中国共産党中央総書記江沢民は、「我々は不動の『平和統一、一国家二制度』の方針を堅持して、積極的に祖国統一を促進する」、「我々は、再度、中国共産党が中国国民党と早期に接触し、条件を整備して正式に両岸の敵対状態を終結させ、逐次平和統一実現のための交渉を進めるよう望んでいることを重く提案する。交渉に両岸のその他の政党、団体あるいは各界を代表的する人士が加わってもよい」と語った。

  「和平統一、一国家二制度」の基本点 。「和平統一、一国家二制度」は中国の特色を持つ社会主義の建設の理論と実践の重要な構成要因であり、中国政府の長期不変の基本国策の一つである。この方針には、以下の基本点がある。

  (一)一つの中国 。世界には一つの中国だけが存在し、台湾は中国の不可分の一部であり、中央政府は北京にある。これは世界中で公認されている事実であり、台湾問題の平和解決の前提である。

 中国政府は中国の主権と領土保全を分裂させるいかなる言行にも反対し、「二つの中国」、「一つの中国と一つの台湾」あるいは「一つの国家に二つの政府」に反対し、「台湾独立」の企画や実行を導く可能性のあるすべてに対して反対を堅持する。海峡両岸の中国人民は、すべて一つの中国を主張し、すべて国家の統一を擁護しており、台湾が中国の不可分の一部であることは確定した変更不能の時効であり、「自決」というような問題は存在しない。

  (二)二つの制度の共存 。一つの中国の前提の下で、大陸の社会主義制度と台湾の資本主義制度を、長期にわたって実行し、共存し、共に発展し、どちらも互いを害さない。このような考慮は、第一に台湾の現状と台湾同胞の実際に対する配慮に基づいている。これはまさに、統一後の中国の国家体制の大きな特色であり、重要な創造であり。  両岸統一実現後、台湾の現在の社会経済制度は変わらず、生産方式も変わらず、外国との経済文化関係も変らない。私有財産、建物、土地、企業所有権、合法の相続権、華僑と外国人の投資などは、すべて法律で保護される。

  (三)高度の自治 。統一後、台湾は特別区になる。台湾は中国のその他の一般省区とは異なり、高度の自治権を享有する。台湾は台湾の行政管理権、立法権、独立した司法権と最終審議権が保証される。党、政治、軍、経済、財政なども自ら管理する。外国と経済的、文化的な協定を締結することもでき、一定の外事権を共有する。独自の軍隊を持ち、大陸は軍隊を派遣せず、行政人員も台湾に駐在しない。特別行政区政府と台湾の各界の代表者は国家の政権の指導的な職務に任じられて、全国の事務管理に参与することができる。

  (四)平和交渉 。交渉を経て、国家統一を平和的に実現することは、すべての中国人の共通の願いである。両岸はいずれも中国人であり、中国の主権と領土保全が分裂し、軍事的骨肉の争いになることは、両岸の同胞の最大の不幸である。平和統一は民族の大団結にとって有利であり、台湾の社会経済の安定と発展に有利であり、全中国の振興と富強に有利である。

 敵対状態を終結させ、平和統一を実現するために、両岸は早期に接触して交渉するべきである。一つの中国の前提下で、どのような問題も相談でき、これには交渉の方式、参加する党派、団体および各界の代表人士から、さらに台湾が関心を有するその他のすべての問題までが含まれる。両岸が同じテーブルについて話し合いさえすれば、双方がともに受け入れられる方法を見つけることが必ずできるだろう。

 両岸の現実の状況を鑑み、中国政府は統一実現の前に双方の相互尊重、互補互利の原則に基づいて、両岸経済の合作と各種の往来を積極的に推進し、直接の三通(通郵、通商、通航)を推進し、国家の和平統一の条件を創造する。

 和平統一は中国政府の既定方針である。しかし、すべての主権国家は、国家の主権と領土保全を擁護するためには、軍事的なものを含む自己が必要と判断した手段を採用する権利がある。中国政府は本国の内部的事務の問題を処理する方式について、いかなる外国にも、あるいは中国の分裂を画策するものに対しても、何の義務も存在しない。

 また、次のことも指摘しておかなければならない。台湾問題は純粋に中国の内政であり、第二次大戦後の国際協議とドイツの問題あるいは朝鮮問題の形成とは同じではない。したがって、台湾問題をドイツ問題、朝鮮問題と並べて論ずることはできない。中国政府は、以前からドイツ問題、朝鮮問題の処理方式を台湾問題に適用することに反対してきた。台湾問題は、当然、両岸の協議を通じ、一つの中国の枠内で合理的に解決されなければならない。

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