民進党台湾前途決議文

1999年5月8日に開催された第8届第2次全国党員代表大会で採択

T.まえがき

 民主進歩党と全民衆の長期にわたる困難な共同の奮闘をへて、国民党に戒厳令と一党独裁の放棄を迫り、民主改革を勝ち取り、1992年の国民大会の全面改選、1996年の総統直接選挙、さらに憲法改正、台湾省政府廃止などの政治改造を達成し、これによってすでに台湾は事実上の民主的な独立国家になった。過去の成果と経験を総括し、新しい情勢と新しい環境に応じて、将来の可能な発展と望ましい姿を展望し、わが党は、国家体制の改造を継続して推進しつつ、台湾の位置と方向に関する解釈を一歩進めて、各界にわが党の現段階における台湾の前途についての観点と主張を表明し、現在の基礎と成果の上で、新世紀の挑戦に向かいたい。

U.主張

第一、台湾は一つの主権独立国家であり、独立の現状に対するどのような変更も、全台湾住民の公民投票方式を経て決定しなければならない。

第二、台湾はまた、中華人民共和国には属さず、中国が一方的に主張する「一つの中国の原則」と「一国両制」は台湾には根本的に適用しない。

第三、台湾は広く国際社会に参加し、国際的な承認を受け、国際連合およびその他の国際組織に加入することを努力目標として奮闘すべきである。

第四、台湾は「一つの中国」の主張を放棄し、国際社会の認知の混沌と中国の併呑の口実を回避すべきである。

第五、台湾は迅速に公民投票の法制化の過程を完成させ、直接民権を安定させ、必要ならば国民のコンセンサスを結集して、全民の意思を表明するべきである。

第六、台湾の官民各界は党派に分かれず、対外政策について共通認識を確立し、有限な資源を整理して中国の圧力と野心に対抗すべきである。

第七、台湾と中国は、あらゆる方向からの対話を通じて相互の理解と経済貿易および互恵の合作を深め、平和的な架け橋を確立し双方の長期安定と平和の達成を期するべきである。

V.説明

 主権独立と自主は、国家の安全、社会の発展および人民の幸福の前提である。台湾の主権と独立、および中華人民共和国との間に相互の隷属関係がないことは、すでに歴史的な事実であり、また現実的な状態である。これは、台湾の生存条件であるのみならず、民主政治の発展と経済の奇跡の創造の基礎である。

 民主進歩党は、1991年の冷戦体制崩壊による、自由、民主、自決思想潮流の全面的な勝利の際に、党綱領改正を行い、台湾の主権独立を主張し、重要で新しい国家のあり方を提出し、憲政体制の修正と新しい国民意識のなどの三項目を主張した。当時は、異端として抑圧されたが、10年を経ず、台湾の主権独立はすでに社会的な共通認識になっており、その延長線上での具体的な主張が、憲政体制および法令規則において迅速に血肉化されている。

 台湾は一つの主権独立国家であり、その主権領域の及ぶ範囲は台湾、澎湖、金門、馬祖、およびその付属諸島、さらに国際法に準拠した領海と隣接水域にすぎない。もとより、台湾は現憲法に基づき中華民国を称しているが、中華人民共和国との間において相互に隷属せず、独立の現状に対するどのような変更も、全台湾住民の公民投票方式を経て決定しなければならない。

 前述の新しい社会的コンセンサスにより、対外的には、我国はもはや「中華民国」の使用にこだわらず、各種の異なる名称によって広く多様な政府および非政府の国際組織に参加している。対内的には、国民党の「全中国の唯一の合法政府」の妄想を打破した後、国会の全面改選、総統の直接選挙、台湾省の凍結と廃止などの憲政の改造作業に従事してきた。新しい国民意識の発展のもと、我々はまた、国民教育教材の本土化を推進し、国民の台湾の歴史文化への認識を深めた。さらに、1999年の初頭に「領海法」を制定し、領土と領海の範囲を定め、もはや台湾を全国的な社団の名称とすることを禁止しないことを宣言した。これにより、台湾の主権独立の原則はその優越性を全面的に展開され、結論としての規範力を獲得した。1991年党綱領の先見性はすでに十分に証明されている。

 1999年現在、体制の改造はいまだ完全ではないとはいえ、官民における国家アイデンティティーの激しい対立は緩和され、統一的な対外的契機を切り開いている。今日、中国の圧力に対するにあたっての政府や民間の内部に存する相違点は、もはや、国家アイデンティティーの価値観の問題ではなく、国家の安全と主権独立の政策上の相違に縮小している。

 冷戦の終結、自由民主思想の全面的な勝利、台湾の民主化および統一に反対する民意の比率の不断の増加、これらはすべて台湾の独立の現状を擁護し、その国際的な地位を高めるための有利な要因である。しかし、一方では、中国の国力の上昇は著しく、覇権思想を持続的に強化しており、これは台湾の前途に対する重大な障壁である。民主進歩党は、波や雲をも欺く国際政治と諸般の利害関係の交錯下で、台湾は時勢を見極め、安全、慎重、漸進的な対中国政策を策定し採用しなければならないと考える。

 民主進歩党は、全世界が和解、安定および繁栄を求める気分の中で、台湾と中国の双方とも時代の潮流から自らを永遠に切り離し続けることはできないと考える。両者は地理的に近く、経済的には相互に利益をもたらし、文化的に源を共にする国家であって、永遠に相互を敵視し、互いに隔壁を設定し続けることはできない。民主進歩党の中国政策の最終目標は、中国との間の、互恵で、互いを付属物と見ない、平和で対立のない、対等な非従属的関係の確立である。民主進歩党は、中国政府が台湾人民の願望と台湾の主権独立の歴史的事実を正視することを希望する。また、中国人民が過度の民族主義思想の枷を取り除き、誠実に台湾人民の独立自主の要求、自由民主体制下の繁栄と発展への強烈な願望を理解することを希望する。さらに、民主進歩党は、まもなく到来する新世紀中に、台湾、中国双方が猜疑と対立を捨て去り、双方の歴史、文化、血縁における悠久の関係から出発し、地縁政治から、区域の安定、経済利益に着眼し、共存共栄の、互いに信頼し、互いに利益を得るすばらしい未来の姿に至ることを希望する。

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