善隣会館問題にかんする声明
社団法人 中国研究所

 

さる 2 28 日から激化した、いわゆる「善隣会館問題」について、私たちは戦後の日中関係におけるきわめて重大事として注目し、科学者として、できるだけ客観的に調査し、問題のあり方を追求してきました。その結果、現在、この問題について全然相反する二つの見解があるにもかかわらず、その本質は「日共による在日中国人学生にたいする集団暴行事件」であるという結論に到達しました。しかもこの事件は偶然に発生したものでなく、その原因は昨年春ごろからの日共の排外主義的な反中国政策にあり、その結果、今回の事件にみられるように公然とした暴力行為の形態にまで、必然的に発展してきたものであることも確認しました。その意味で、この事件は本質的には 1958 年の「長崎国旗事件」と共通する性格をもっています。ただし、「長崎国旗事件」は二、三の右翼分子の突発的な行動でありましたが、今回の事件は、革新政党の一部による計画的、かつ組織的行動であり、しかも名目的には「正当防衛」論を利用する公然たる形態をとっている点に基本的な相違がみられます。

したがってこの事件の反響が国際的、国内的世論にひろく反映してきているのは当然でありましょう。

この事件の主な被害者は、在日外国人の一部である、中国人学生でありますから、かれらの法的地位および合法的権利の侵害は、国際法ないし国際慣例違反の問題であり、また国内法上の問題としては、日本国憲法の前文「いずれの国家も自国のことのみに専心して他国を無視してはならないのであって、政治道徳の法則は普遍的なもの」とする国際主義の精神に違反します。とくに日本国民として、ほかならぬ中国にたいする戦争責任の反省が、いまだに不徹底の状態にある今日、深い道義的な責任を感ぜざるを得ません。

したがって、日中友好にそう中国研究を志すものとして、この事件のもつ国際的、国内的意義をみのがすことはできません。これをいかに評価するかは、研究者の基本的な姿勢および、その社会的責任にかかわることであります。私たちの研究は、中国を敵視するためでなく、戦前の日本人の中国観の誤りを正し、日本国憲法前文の精神にもとずく、真の日中友好を、学問上の前提としています。

在日中国人学生の合法的権利―とくに生命の安全と思想の自由―を侵害するこのような排外主義的な行動にたいし、私たちは平和と日中友好をねがう圧倒的多数の日本国民とともに強く非難します。同時に在日中国人学生が 1 日も早く安心して勉学できるような条件を保障することがなによりも大切であると思います。

これらのことは、ただ在日中国人学生のためのみでなく、日本国民が、日本国憲法前文の国際主義的な精神を具体的に生かす道と信じます。したがって、平和を望む大多数の日本の科学者も、その思想・信条をこえた共通の社会的責任として、この問題の解決に協力されることを期待しています。私たちの見解を所の内外に表明するものであります。

1967 3 30

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