[経済政策]

「企業の利益 家計に回らず」(9/29) ***

安倍政権がアベノミクスで目指す経済の好循環は、企業の利益が家計に回らず、現時点で十分に機能しているとは言い難い。企業が先行き不安からためた内部留保がこの4年間で約300兆円から約400兆円へと100兆円余り増えた一方、家計の分け前となる賃金は伸び悩んでいるのが実情だ。

財務省による法人企業統計によると、金融保険業を除く全産業の16年度の経常利益は過去最高の約75兆円を記録した。内部留保に当たる利益剰余金は約406兆円に達し、12年度から3割以上膨らんだ。これに対し、従業員の給与などを合算した16年度の人件費は約202兆円でこの間に約5兆円の増加、設備投資も約43兆円で約8兆円の伸びにとどまっている。

安倍政権は法人税減税などで企業活動を後押しし、その恩恵を賃金や設備投資に回すように産業界に圧力をかけてきた。だが企業側からみると、人口が減り市場が縮小していく国内への投資より、海外企業の合併・買収を優先するのは当然の論理だ。また、過去の苦い経験から手元資金に余裕を持たせようとする守りの意識も強い。

麻生財務相は「企業全体の現預金の比率が極めて高い。賃金、設備投資、配当に回すのが常識だ」と経営陣の姿勢に不満をぶちまける(参考文献:信濃毎日新聞)。