[自動車産業]

「不可避のEV革命雇用に懸念−佐和隆光(要約)」(9/14) ***

英仏両国政府が「2040年までにガソリン車・ディーゼル車の販売を禁止する」との方針を打ち出した。中国政府も追随するとのことだ。

日本のCo2排出総量に占める運輸部門の比率は17%である(2015年度)。運輸部門のCo2排出量に占める乗用車の割合は51%、トラック・バスの割合は36%、残り13%を鉄道、航空、船舶が占める。

電源で間接的にCo2を排出するEVは、Co2原単位においてガソリン車をいかほど上回るのだろうか。東京電力福島第一原発事故直前の2014年には、1キロワット時当たりの平均排出量は416グラムだった。すべての原発が停止していた13年度のそれは570グラムだった。

乗用車の実燃費効率は、普通のガソリン車で1リットル当たり約10キロ、ハイブリッド車で約20キロ強である。EVの燃費効率は1キロワット時当たり約10キロである。EVのCo2原単位は、原子力がなくてもハイブリッド車の2分の1程度に過ぎない。仮に電源がすべて石炭火力だとしても、Co2原単位は864グラムであり、EVはハイブリッド車をしのぐ。  EVメーカーの筆頭格はテスラモーターズである。ビッグ3が支配してきた米自動車市場への機会をEV革命が提供したのである。

EVのもう一つの魅力は、ガソリンに比べ電力が安価な点である。ガソリン1リットルが130円前後に対し、電力料金は1キロワット時20〜30円(深夜料金で10円前後)と断然安い。

EV革命がもたらす深刻な社会問題は、大規模な雇用の喪失である。エンジン自動車は実に多くの部品から組み立てられており、部品メーカーだけで60万人もの就業者がいる。推計では、自動車関連業者数は534万人で全種業者数の8.3%に及ぶ。部品メーカー、ガソリンステーション、運送業ほか、資材部門も含む数字だ。脱ガソリン・エンジンの進展により、少なくとも100万人余りが失職するものと予想される。

しかし、気候変動緩和のためには、EV革命は不可避である。しかも、自動運転が同時進行する。今後、四半世紀のうちに、自動車産業を取り巻く環境は激変するだろう(参考文献:信濃毎日新聞)。