[経済政策]

「実感乏しい景気拡大」(10/12) ***

安倍政権のアベノミクスは、円安株高をもたらし企業の景況感も改善したが、賃金は伸び悩み消費は力強さを欠く。デフレ心理は解消されず景気拡大の実感は乏しい。

大規模な金融緩和と財政出動でGDPは2013年に上向いた。14年4月の消費税率8%への引き上げで大きく落ち込んだが、海外経済の追い風もあり輸出を中心に企業業績が伸び6四半期プラス成長を持続した。景気拡大は58ヶ月に伸びいざなぎ景気を超えた。有効求人倍率も1.5倍とバブル期を上回る水準だ。

一方で、賃上げの動きは鈍い。安倍首相自ら賃上げを迫る官製春闘で4年連続のベースアップが実現したが、今年は過去4年で最低水準にとどまった。物価変動を加味した実質賃金水準も消費税増税前の水準を下回り、家計の節約志向は根強い。

人手不足から人件費が増加している宅配便などでは値上げの動きがあるが、スーパーなど顧客離れを警戒して逆に値下げし、直近の消費者物価指数は0%台後半にとどまった。

消費税率10%への引き上げも2度延期され、財政再建にも暗雲が垂れ込めている。国の借金が1千兆円を超え、20年度に基礎的財政収支の黒字化を目指す財政健全目標は先送りされた。財政再建への悲観論から国債が売られ金利が上がるリスクが高まると、家計や企業活動にも悪影響が広がる。

北朝鮮やトランプ米政権など国際情勢が不透明の中、景気と財政に目配りしながらの経済政策は一段と難度を増している(参考文献:信濃毎日新聞)。