[ユーロ圏経済]
「好調なユーロ圏経済―山崎加津子氏(大和総研)」(要約) (12/17) ***
ユーロ圏経済が好調である。景気拡大は5年目に入り、経済成長率は2016年の1.8%から17年は2.3%に加速すると見込まれる。景気回復の初期は個人消費の回復に支えられていたが、この1年は輸出が伸び、内外の需要拡大を背景に投資も活発化したため、バランスの取れた経済成長となっている。これに加えて、17年は重くのしかかってきたデフレ懸念の後退が確認された。
18年もユーロ圏としては高めの2%の成長を続けると予想される。ここ数ヶ月の企業景況感はリーマンショック前の好況期よりも強気になっており、投資が拡大し経済成長をけん引するものと見込まれる。ただ、輸出の伸びは17年比でやや鈍化する可能性が高い。ユーロ圏の主要輸出先は、米国、英国、中国だが、中国は構造改革の推進により成長率は緩やかに減速すると予想される。英国は、EUとの離脱交渉の難航が予想され、低成長を脱することは難しいだろう。残る米国は、税制改革しだいで上振れ、下振れ双方の可能性がある。
一方、18年のユーロ圏の消費者物価上昇率1.4%となり、欧州中央銀行(ECB)が中期的な目標としている2%をやや下回るインフレ率に届かないと予測される。労働需給が逼迫していないため、賃金上昇率の加速によるインフレ圧力は高まらないと見られる。また、17年半ばから進行しているユーロ高は、18年にインフレ抑制要因になると見込まれる。
米英などに比べ景気回復が遅れてきたユーロ圏は、18年もまだインフレ加熱を伴わない高成長が可能だと考えられる。しかし、リスクも存在する。17年は好調だった中国とアメリカの景気が変調を来せば、外需に黄信号がともる。中国が想定以上に減速すれば、その影響は広範囲に及ぶだろう。
一方、内部要因ではECBの金融政策が鍵を握りそうだ。今後は、超低金利局面が長期化することで株式、不動産、低格付け債などの資産バブルを助長しないように、しかし、ECBの政策転換が金利急上昇の要因となって資産価格の急落やユーロの急上昇を招かないように、という二つのリスクに対する警戒が必要になると予想される(参考文献:信濃毎日新聞)。