[国内金融情勢]

「日銀の信用2%の撤回からー水野和夫氏」(8/26) ***

日本銀行は7月の金融政策決定会合で、2%物価目標の達成の時期を2019年ごろへと先送りした。先送りは6度目で黒田総裁の任期中には達成できそうもない。

13年4月に黒田総裁は、異次元金融緩和により2年で2%物価目標は達成できると説明した。ところが4年後の今年7月には、「日本の場合は特に予想物価上昇率が、足元の物価上昇率に適合的な形で引きずられる傾向が非常に強い」ことが、昨年の総括的な検証の中で明らかになったと説明する。しかし、こうした適合的な期待形成を、異次元金融緩和で粉砕するという決意だったはずである。黒田総裁の就任以前から日本には適合的な期待形成があったはずで、それを知らなかったとでも言うのだろうか。

ようやく見通しの誤りであることは認めたが、これまでの自分の政策は間違っていないと言わんばかりである。その原因を企業や家計の行動や原油価格の下落に求めたりして、いずれ上がるというので、国民は日銀の政策を信用できないのである。

一方で、日銀の調査によっても多くの家計は物価の上昇を望んでいない。世界一の生産力を有するから、日本では物価が上がらない。こうした事情を無視して、欧米でも2%目標だからだといって足並みをそろえる必要はない。2%物価目標の撤回が日銀に対する信用回復の第一歩だ。物価上昇率ゼロとは、家計・企業とも不確実な価格予想に煩わされることなく済活動に専念できる理想の状態なのである(参考文献:信濃毎日新聞)。