[国際金融動向]

(1)ギリシャ危機から学ぶもの‐佐藤隆三(7/25)***

ギリシャ危機は、ギリシャが欧州連合(EU)の新たな要求を呑むことにより一応の決着を見た。しかし、ギリシャの債務はGDPの1.8倍であり、近い将来ギリシャ問題は再燃すると危惧されている。

先進国の間では、日本の財政事情は最悪である。日本の債務残高は、国および地方で対GDP比で2倍を超えている。この数字だけを見ると、日本はギリシャのように財政 破綻に追い込まれると憂慮するかもしれない。だがそこにはいくつかの相違点と類似点がある。三つの相違点からみてみよう。

第一の相違点は、ギリシャの債権者は外国の銀行か投資家だった。5年前の金融危機後、これらの債権はIMFやECBなどが買い取っている。一方、日本の債権者は9割以上が国内の投資家や金融機関そして日銀ある。第二の相違点は、日本は独自の通貨システムを持つ。つまり、金融緩和・引締め政策は、自由に行われる。一方、ギリシャは共通通過ユーロが使われているため、景気の調整に金融政策を用いることは出来ない。第三の相違点は、両国の規模の大きさである。ギリシャの人口は日本の約10分の1で、GDPは神奈川県より小さい。日本はGDP世界3位で産業競争力もあり、ギリシャのGDPの約7割は観光業に依存し、ハイテク産業もほとんどない。

では、日本の赤字財政に問題は一切ないのかというと、大いにありだ。第一に、借金は必ず返さなければならない。日本の家計貯蓄率は2013年度に初めてマイナスに低下した。団塊の世代が75歳以上になる10年先には個人の金融資産が減少して、国債の買い手を外国に頼らざるを得ないかもしれない。第二に、借金はインフレになるとタダ同然になるといわれるが、日本は過去20年デフレに悩まされてきた。第三に、国の借金を消費税などの増税で返済する方法はあるが、財政が税収の増加で潤えば政治家が無駄使いするという政治家の行動方程式がある。洋の東西を問わず政治家のばらまき行動である。

さて、ギリシャはなぜかくも債務問題に苦しむのか。答えは、ギリシャがEU加盟以前の自国通貨ドラクマを捨てて共通通貨ユーロを採用したからである。確かに、ギリシャは浪費と責任回避により自国の経済能力以上に政府支出を増加し続けた。しかし、ギリシャは独自の通貨がなく、独仏などの大国の経済事情により動いているユーロに従わざるを得ない。つまり、ギリシャは金融政策なしの財政政策という不安定な政策を強いられている。

これを日本に当てはめると、日本は財政政策も金融政策もあるが、前述のように政治家が借金をしてもカネを使いたがる点ではギリシャと似ている。

ギリシャ危機から学ぶことは、返済は借用より10倍も苦しむ。したがって、国民の税金を使う政治家が、率先垂範を実行して借金を増やさないことである(参考文献:信濃毎日新聞)。