[環境問題]
(1)正念場の温暖化対策―危機感を共有しながら(4/18) ***
世界各地で熱波や干ばつ、洪水などの深刻な被害が相次いでいる。温暖化が続くと異常気象のリスクはさらに高まる。
世界の温暖化対策は、今年一つの正念場を迎える。気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)が年末にパリで開かれる。1997年に採択された京都議定書に代わる新たな国際枠組みの合意を目指している。産業革命以降の平均気温の上昇を2度未満に抑えるのが世界共通の目標だ。達成には高いハードルを乗り越えなければならない。
世界の科学者らでつくる国際組織「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」は、一昨年から昨年にかけ温暖化の報告書を発表した。今のまま温室効果ガスの排出が続くと、今世紀末の世界の平均気温は20世紀末に比べ最大4.8度、海面は82センチ上昇する恐れがあるとしている。そして豪雨などによる災害への不安や、穀物生産や魚類の分布の変化による食糧難など、社会にさまざまな影響が及ぶことが記されている。国際目標を達成するには、これからの二酸化炭素(CO2)排出量を1兆トン以下に抑える必要がある。現状は毎年三百数十億トンだ。このままでは30年ほどで達してしまう。
COP21に向け、各国が削減目標を打ち出し始めている。米政府は3月末、2025年までに05年比で26〜28%削減するという目標を条約の事務局に提出した。国際エネルギー機関が削減可能と試算した16%を上回る。欧州連合は、30年までに90年比で40%削減するという中期目標も決めている。そして、50年には10年比で60%削減するという野心的な目標をいち早く発表した。
各国が新たな枠組み作りへ意欲を示す一方で、日本の削減目標はまだ定まっていないのは残念だ。30年までに05年比で20%台以上の数値とする方向で検討している。
削減目標の議論が遅れているのは、原発の稼動をどうするかなど今後のエネルギー政策が決まっていないことが理由だ。CO2を出さない原発は、確かに温暖化対策に関係する。しかし、節電や省エネをはじめ、やるべきことは多い。太陽光、風力発電という再生可能エネルギーの普及に力を入れる必要がある。再生エネは、技術が進歩し大規模に展開できるようになってきているのである。
温暖化対策は国民全体で取り組まなければならない。福島の事故と向き合う国として原発頼みではなく、再生エネや省エネを柱に展望を開く。そんな意思を示す時期に来ているのではないだろうか(参考文献:信濃毎日新聞)。