[財政]

(1)財政再建には経済成長が本筋−高橋洋一9/30) ***

経済協力開発機構(OECD:加盟34カ国)の玉木事務次長が会見し、消費税の再増税に関し「財政再建を脱線させないでほしい」と必要性を強調し、短期の景気減速を理由に増税を先送りすべきではないとの認識を示した。玉木氏は「7〜9月期の経済指標が多少低め結果でも、財政再建のペースを落とすとか、今まで決めたことを変える大きな要因とはならない」と述べたという。

玉木氏は元財務官である。財務省は国際通貨基金(IMF)で副専務理事というポストを持っており、歴代財務官OBが就任している。一方、OECDではめぼしいポストを持っておらず、外務省系の日本人が比較的高いポストに就いている。このなかで、財務省が満を持して送り込んだのが、玉木氏というわけだ。

IMFは財務官出身の副専務理事がいるためか、財務省(日本)の意向に沿った発言が多い。そして、OECDでも似たような傾向になってきた。ただし、OECDのガリア事務局長の意見は若干、玉木氏とニュアンスが異なる。ガリア氏はより経済成長を目指している。かつて、来日したガリア氏は「成長がすべて」と言い切った。成長すると金利上昇により利払いは増大するが、一方で成長すれば税収も上がり、税収増は利払い増を長期的には凌駕するので、経済成長が重要だというわけだ。

OECDは、先進国間の自由な意見交換や情報交換を通じて、

  @ 経済成長
  A 貿易自由化
  B 途上国支援に貢献すること

を目的としている(OECDの三大目的)。成長を否定できるはずがない。成長は財政再建を含め多くの問題を解決できるからこそ、OECDが目的のトップに掲げている。ちなみに、この20年間で、日本の名目経済成長率はOECDで最下位だ。

タイミングが悪い増税は、経済成長を阻害する恐れがある。何が何でもと増税にのめりこめば、OECDの目的に反してしまう。少なくとも今の日本に求められているのは、増税ではなく、名目経済成長率をOECDで平均的な4〜5%程度に高めることだ。それが財政再建にも近道になる(参考文献:夕刊フジ)。