[国内景気動向]

(1)為替レートと景気(10/9)―高橋洋一 ***

第一次安倍政権の終わりの115円から野田政権まで一貫して円高となっている。野田政権で一時75円台まで進んだが、第二次安倍政権で円高分をほぼ取り戻したといえる。

為替が円高になると海外直接投資が増える。第一次安倍政権以降、30円ほど進んだ円高を放置したことで、年間ベースで3兆6000億円もの海外直接投資を行わざるを得なかった。もちろん、為替に関係なく海外展開したい企業はある。しかし、相関係数を見ると国内設備投資70兆円の5%程度に相当する海外直接投資が円高のために行われたことになる。そうした海外直接投資は収益として返ってくる。ただし、国内の雇用機会は、海外に投資した分だけ失われている。

円高放置は、福田政権以下の責任であるが、雇用重視のはずの民主党政権下でも円高を大きく加速させたのは情けない。

円高放置は、各国が金融緩和する中で、日本のみが怠ったことが原因だ。金融緩和は雇用確保にもなるのに、民主党は金融政策に無理解で、雇用重視は言葉だけになっていた。

率直にいうと、いったん海外へ出て行った企業はなかなか戻らない。企業は円高傾向が定着した時点で海外へ出て行く判断をしたように、円安傾向が一定期間定着しないと国内回帰は難しいだろう。今のところ、円安の反転は2年弱なので、あと3年くらいの時間はほしい(参考文献:夕刊フジ)。