[雇用情勢]

(1)官製春闘の賃上げ(3/13) ***

今春闘は、大企業のベースアップ(ベア)が相次いだ。多くの経営者は経済の好循環実現に企業努力が必要と判断したが、デフレ脱却を目指して政府がかけた圧力に屈した面も強い。ベアは高水準となったが、消費税増税を補うには力不足との指摘があり、不安を残した。

甘利経済再生担当相が「利益があるのに何もしない企業には、経済の好循環に非協力的ということで何らかの対応をとる」と発言し、政府は賃上げを促した。

政府は昨秋から政労使会議を開き、企業に賃上げを要請してきた。復興特別法人税の前倒しを決め、「恩を売る」ことで経営側の抵抗を封じる戦略だった。

デフレ脱却により物価が上がっても賃金が増えなければ、庶民の生活はかえって苦しい。4月の消費税増税で負担感が増し、景気が悪化すれば政権の支持率も失速しかねない。経団連の米倉会長は「労使で懸命に話し合い、成果を挙げた」と強調した。

労働側には危機感が残る。今後も政府が介入すれば、組合員の減少に悩む労働組合の存在感はさらに薄くなる。金属労協の西原議長は「政府からの発言は、賃上げの必要性を経営側に認識させる効果があった」と認めざるを得なかった。

一方、中小企業の春闘回答が本格化するのはこれからだが、大手の動向を見守ってきた地方の中小企業団体幹部は「中小企業でもベア実施には、ばらつきがあるのではないか。『賃上げは大企業だけの話だ』との訴えも聞く」と冷ややかに語った(参考文献:信濃毎日新聞)。