[電力産業]

(1)電力全面自由化―残るは発送電分離(6/12) ***

参院本会議で電力小売事業を全面自由化する改正電気事業法が成立し、政府が規制改革の看板政策に位置づけている電力システム改革が第2段階まで到達し、ゴールとなる発送電分離を残すのみとなった。超閉鎖市場だった電力分野で本当に自由化が進むのか、国際的にも注目されている。

東日本大震災では、東京電力が計画停電に追い込まれるなど、大手電力による地域独占体制のもろさが露呈した。大手の地域独占を撤廃する背景には、電力事業者を増やし電力供給力を拡大することで電力不足のリスクを低減したいとの期待感がある。

改革の第一段階では、全国規模の競争を念頭に、強制力を持って電力需給を調整する広域的運営機関を、2015年をめどに設立する。11日に成立した改正法は第二段階で、16年に電力小売を許可や届出制から登録制に切り替え、誰でも自由に参入できるようにした。改革の本丸との位置づけだ。

新たに開放される家庭向け電力小売の市場規模は7.5兆円と巨大で、通信や流通、サービス業といったエネルギー業界の外側からも多くの企業の参入が見込まれている。

最終段階となる発送電分離は15年の通常国会に法案を提出し、18年から20年をめどに実施する計画だ。全国の送配電網を道路のように広く開放し、新規事業者も公平に利用できるようにする改革だが、政府は送配電網の所有権ごと大手電力から切り離す所有権分離はせず、法的分離にとどめる方針だ。所有権分離は電力会社の財産権の侵害になるとの判断からだ。しかし、法的分離では電力会社がそれを傘下におく形態が想定され、参入を検討している企業などから「大手電力の影響力が残り、中途半端だ」との批判があり、公平な競争環境の整備に向けなお議論の余地がありそうだ(参考文献:信濃毎日新聞)。