[国際金融政策]

(1)欧州中銀、初のマイナス金利導入(6/6) ***

欧州中央銀行(ECB)は、主要中銀として初めて、市中銀行からの預金受け入れの際の金利をマイナスにする「マイナス金利」を導入することを決め、ユーロ圏の金利政策は未知の領域に入った。異例の政策は、政策手段を総動員しデフレ懸念に断固として対処する姿勢を示すのが狙いだ。

デフレは企業や家庭が価格下落を見越して投資や消費を控えることで加速する危険がある。デフレから抜け出すのがいかに難しいかは、90年代末以降の日本の経験が示している。

マイナス金利は一種の賭けだが、欧州中銀はデフレ観測がこれ以上広まる前にこそ実施するべきだと判断した模様だ。ただ、マイナス金利が実体経済に与える効果は不透明だ。

手数料となるマイナスの金利を払うのを避けようとする銀行が、中銀に預けていた資金を企業への貸し出しにまわすことなどで景気刺激が期待されるというのが表向きの理由だ。欧州中銀にとり現在最大の問題は、極端に低い物価上昇率であるディスインフレだ。デフレと同様に経済に悪影響を与えるとされる。預金金利はすでにゼロで、マイナスにするしかなかった。しかし、実際に融資拡大について目立った効果は確認されていない。ただ、国境をまたいでビジネスをする銀行が、手数料を取られるくらいならば他の通貨で運用しようとすることで、通貨安になるという効果があるとされ、実際は通貨安が主目的だとの見方がある。

デンマークでは2012年7月から今年4月にかけ、マイナス金利を導入した。だが、通貨高を抑えるという目的は達成したが、銀行融資は増えなかったと指摘されている。

副作用としては、銀行が中銀に払う手数料を融資金利に上乗せする動きが広がれば、逆に景気を冷え込ませかねない。体力が弱っている銀行の経営不安を加速させる恐れもある(参考文献:信濃毎日新聞)。