[世界金融情勢]

(1)新興国通貨下落は米量的緩和に動揺する投機的な動きー高橋洋一(1/31) ***

米FRBが量的金融緩和の縮小を決定したのは、昨年12月18日だ。その方法は、市場から購入する債券の総額を徐々に減らしていくもので、緩和のスピードをダウンさせるものである。

FRBは、以前から量的緩和について「6.5%以上の失業と2%以下のインフレ率」という明確な条件を示している。そして、金融政策の効果には遅れ(ラグ)がある。米経済の場合には、リーマンショック後のマネタリベースと失業率の関係には、1年程度のラグがあることが分かっている。この関係により、1年後の失業率を予測することができる。今のマネタリーベースの増加では、年末の失業率は6.5%程度である。ここあたりで緩和スピードをダウンさせない場合、失業率が6.5%を大きく下回り、その代わりにインフレ率が高くなる可能性が出てきていた。

いずれにしても、市場関係者の量的緩和への基本的な無理解に乗じて、新興国通貨への投機が行われているというのが、筆者の見立てである。

もし多くの人が量的緩和と失業率の関係を理解していれば、13年12月の緩和縮小を予想できたはずで、そうであれば予定通りの行動として、新興国通貨の大きな変動もなかっただろう。つまり、新興国経済が急変したわけではなく、市場関係者が右往左往し、それに乗じた動きが原因だろう。