[国際収支]
(1)貿易赤字過去最大(1/21) ***
2013年の貿易赤字が過去最大を記録した。円安も流れを変えられず、かつての輸出大国は見る影もない。輸出増を背景に国内生産が勢いづかないと、雇用や賃金の大幅な改善は見込めず、経済の好循環を実現するのは至難の業だ。
高度成長を経て経済大国となった日本にとり、貿易黒字は強さの象徴だった。2回の石油危機を乗り切った1980年代半ば以降、10兆円前後の黒字を保ってきた。13年の11兆円超の赤字は、かつての黒字と赤字がそっくり反転したことを意味する。赤字は、東日本大震災の起きた11年から3年間続く。原発が止まり、液化天然ガス(LNG)などのエネルギー輸入が膨らんだのがきっかけだ。
より深刻なのは輸出だ。円安になると輸入価格が上がり貿易収支がいったん悪化するが、次第に輸出拡大効果が上回り、収支は改善に向かう。Jカーブ効果と呼ばれる現象だ(重要30用語参照)。しかし、予想は裏切られ、13年は前半から平均で20%以上も円安ドル高に振れたものの輸出は伸び悩んだ。
輸出を牽引する自動車業界では、国内主要8社の13年の輸出台数は、11月までの累計が富士重工業とマツダを除く6社で前年実績を下回った。各社が力を入れるのは海外での現地生産だ。為替変動を考えれば、世界規模で生産を分散する必要がある。テレビやパソコンなどデジタル機器はアジア勢に押されっぱなしだ。スマートフォンでは日本が部品供給基地に甘んじ、完成品を中国から大量輸入していることも赤字要因となっている。
巨額赤字の背景には、企業戦略の不可逆的な変化がある。以前は生産拠点が海外に移っても現地で使う生産設備や部品は日本から輸出したが、新興国の生産技術が高まり、現地調達を増やす動きは止まりそうにない。
黒字の所得収支(海外への投資で得られる利子や配当など)を含めた経常収支は黒字を保つが、資源も食料もない日本は貿易黒字があるから資源や食料を調達できていた。この面で、日本は危機的である。