[国際収支]
(1)13年度経常黒字、過去最小(5/13) ***
海外とのモノやサービス、投資の取引状況を示す2013年度の経常黒字額が過去最小に落ち込んだことが分かった。原因は10兆円超にも上る貿易赤字だ。日本経済が輸出大国から投資立国へと構造変化していく転換期に入ったとの見方がある一方、主要産業から稼ぐ力が衰えてきたとの危機感も広がっている。
アジア地域に生産拠点を置く長野県内の上場企業の担当者も「円安基調にあっても工場を国内に回帰することは今のところ考えていない」と言い切った。現地の人件費が国内よりも圧倒的に安いこともあり、県内にある本社工場から生産機能をアジア地域の工場に少しずつ移している。将来は本社工場に開発機能のみを残すという方針は変わっていない。
日本の製造業は、1960年代に目覚ましい発展を遂げた。人件費の安さや品質の高さを武器に、繊維や自動車の輸出が米国向けを中心に急増した。厳しい貿易摩擦を生みながらも、輸出でお金を稼ぐ経済構造が長期間にわたり続いた。
変化が起こったのは、90年代だ。95年春、円相場は当時の最高値1ドル=79円台に急伸した。輸出の採算が悪化した主要メーカーは、海外での現地生産を増やす方向に舵を切り、為替変動の影響を受けにくい体質作りを急いだ。需要のあるところで生産する地産地消の流れは、アベノミクスのもとで円安に転じた後も止まりそうにない。
財務省は経常収支が赤字になり、財政赤字と併せた双子の赤字に陥ることを警戒する。国の借金を海外資金で賄うことになれば信用力に傷がつき、国債が売られて金利が跳ね上がる恐れがあるという。経常収支が黒字を確保できているのは、海外への証券投資による利子・配当や企業の海外子会社からの配当金などによる所得収支の黒字に支えられているためだ(参考文献:信濃毎日新聞)。