[金融情勢]

(1)「少額投資非課税制度」発足へー川本裕子(9/25) **

少額投資非課税制度(NISA=ニーサ)が2014年1月から発足する。同制度は、個人の株式や投資信託の投資に関し、売却益と配当に20%かかる課税を、年間100万円を上限に非課税とする制度だ。

1500兆円にも上る個人資産はほとんど銀行預金と郵貯貯金で保有されている。預貯金の多くが金融機関を介して企業活動に貸し出されれば、経済は活性化されるが、現実はそうなってはいない。個人の資産→銀行預金→国債という流れの前に、国民の富を生み出す企業活動へのお金が細っている印象がある。貯蓄→投資とはなっていない現状がある。

しかし、今年に入って、株高で個人の投資意欲が回復し、ニーサ口座の申し込み数が200万を超えたという報道もある。この口座の非課税期間は5年間なので、累積で500万円まで非課税になる。13年には、株式・投信の配当や売却益にかかる税率を20%から10%に軽減する現行の証券優遇税制が廃止されて、20%に戻るだけに、非課税枠は個人にとり魅力だろう。

200万口座に1年に100万円まで個人が投資すると仮定すると、年間2兆円、5年間で累計10兆円という規模になる。個人資産全体から見ればまだまだ小さいが、今後口座数が増えるとともに、投資に関する人々の態度を変えるきっかけとなり、非課税枠を超えた投資が増えるという可能性もある。本制度が参考とした英国の個人貯蓄口座(通称ISA)では、それまで資産家層に限られていた投資が広い層に広がり、個人投資の拡大に貢献していると伝えられる。

また、ニーサ口座の設計は、損益通算ができないなど、売買を盛んに行って利益を出そうとする人よりも長期投資をする人向けになっている。その意味では、長期間の資産運用を続けられる若年層にもこの制度を利用していく価値は十分にある。

個人の資産運用の効率を上げ、日本の資本市場の拡大に貢献し、企業の積極的な成長志向を後押しする役割を強めることができれば、本制度は成長戦略の重要な礎となるだろう(参考文献:信濃毎日新聞)。