[財政]

(1)政府資産めぐる不都合な事実―高橋洋一(10/31) ***

国の財務書類のバランスシート(貸借対照表)には、財政当局にとり不都合な事実が書かれている。2012年3月末現在のバランスシートには、負債総額1088兆円、そして資産総額629兆円とあるのだ。

借金が大きいことを主張し、財政再建の重要性を唱えてきた主計局では、資産総額が明らかになることには反対で、筆者が国のバランスシートを作ってから公表されるまでに10年程度の時間を要した。IMF(国際通貨基金)などの国際機関では、国の負債の大きさに言及するとき、資産を引いたネット債務で見るのが普通だ。資産を無視して負債だけを見るのは適切ではない。

財政当局は1000兆円もの負債を抱えていると、金利が上昇したときの利払い費が大変になるという。ならば、資産を処分して負債を圧縮すればいいではないか。会社や家計では当たり前の話だ。

資産のうちの貸付金と出資金は、いわゆる特殊法人等を民営化すれば処分できるが、日本では天下り先確保のために民営化は頓挫している。その一方で、財政危機だといって資産の処分を回避して増税する。これでは国民を苦しめる一方で、官僚は天下り先を確保するということになってしまう。国の資産処分は財政危機に陥った国ならどこでもやっていることだ。それをやらないのならば、日本は財政危機とはいえないだろう。

政府資産はできるだけ処分して債務を軽くすべきだ。政府資産の実態は、筆者の近著『日本は世界一位の政府資産大国』に詳しく書いてある(参考文献:夕刊フジ)。