[EU経済]

(1)EU緊縮路線後退(5/30) ***

欧州連合(EU)の欧州委員会は、欧州債務危機対策として各国に課していた財政再建の目標達成を断念して、期限を先送りするなど緊縮策を緩和して、経済成長を重視する政策への転換を表明した。

債務危機の影響で、ユーロ圏17カ国は6四半期連続のマイナス成長と1999年のユーロ導入以来最悪の景気後退に陥っている。ユーロ圏の失業率も、ユーロ導入以来最悪水準の12%台に突入した。スペインやギリシャでは25%を超え、社会的緊張は高まるばかりだ。EUは財政規律と経済統治の強化で市場から一定の信頼を取り戻したが、市民生活は犠牲となったままだった。財政緊縮が景気を悪化させ、失業増を招くという負の連鎖からの脱出を目指す。

財政赤字をGDP比で3%以内に抑えることを各国に義務付け、財政規律の守護神を自任してきた欧州委は、景気後退で規律違反を容認せざるを得ない事態となった。欧州委のバローゾ委員長は「各国の事情に応じて、財政赤字削減ペースを減速させる」と表明した。欧州委によると、13年のユーロ圏の財政赤字削減ペースは、12年比で半分に落ちる。

EU加盟国は、緊縮緩和の代わりに労働市場や年金制度の改革を進め、競争力を強化し、雇用と成長の拡大に向けた具体的な成長戦略策定を義務付けられる。

EU財政緊縮策は各国で市民生活の悪化を招き、ギリシャ、アイルランド、ポルトガル、スペイン、イタリアなどは緊縮を進めた政権が総選挙で相次ぎ敗北した(参考文献:信濃毎日新聞)。