[経済政策]

(1)橋本発言、経済政策にも共通理念―森永卓郎(5/22) ***

大阪市長の橋本氏は、従軍慰安婦が強制連行されたのならば問題だとしているが、自らの意思に基づき性風俗で働く女性ならば、特に問題は無いとしている。しかし、そのような女性の中で、好き好んで性を売る女性はほとんどおらず、彼女たちの大部分がそうせざるを得ない人生の背景を抱えていることが明らかにされている。一番大きな原因は、貧困だ。そうした事情も顧みず、国家権力が女性を性の道具として扱うことを正当化するのは、女性差別を超えて、人権侵害だ。

今回の発言は、橋本氏が支持している規制緩和・市場原理主義化の経済政策と、共通している。市場競争に敗れ貧困に陥っても、本人の努力が足りなかったのだから仕方がないとする。貧困を選んだのは、本人の責任だと断じてしまうのである。現実の貧困は、本人の努力不足の場合もあるが、親の経済的事情などでたまたま十分な教育環境を整えられない家庭に生まれ育ったことの影響の方がずっと大きい。

それゆえ、政治家がまずやらなければならないことは、貧困を壊滅することで平等を守り、慰安婦問題のような悲劇を起こさないように絶対的平和を守ることなのだ。

今回の橋本発言は、弱者への思いやりを欠くという点で、彼のいう市場原理主義の経済政策と共通の理念に基づいており、一体をなすものだ。それゆえ、失言というより本音が出てしまったということだ。それを是とするか否かは、国民が選挙の時に示すしかない(参考文献:信濃毎日新聞)。