[国内景気動向]

(1)安倍政権の成長戦略(5/18) ***

アベノミクスのここまでのスタートダッシュは上出来だった。日銀の大胆な金融緩和は、円安・株高を加速させた。機動的な財政出動も、12年度補正予算と13年度予算を合わせると100兆円を超すだけに、景気を後押しすることは間違いない。ただ、公共事業は一時のカンフル剤でしかなく、このまま走り続けられるかは、三本目の矢「成長戦略」の出来にかかっている。

安倍首相は、昨日成長戦略の第2弾を発表した。女性の活躍や医療分野の規制緩和を中心に据えた4月の第1弾に続くものだ。6月に第3弾の発表を経て全体像を決定する。

第2弾は、農家所得を今後10年で倍増させることと、企業の設備投資をリーマンショック前の70兆円前後に回復させることが柱である。農家所得倍増は高度成長期ならともかく、実現性のある第三の矢といえるだろうか。参院選と環太平洋連携協定(TPP)交渉参加を意識した、票目当ての大風呂敷との印象がぬぐえない。

設備投資の増加は雇用拡大につながり、狙いはいいのだが現実のハードルは高い。今年1〜3月期のGDPの高成長は、円安・株高によって個人消費や輸出が増えたおかげで、肝心の設備投資は5四半期続けてマイナスだった。今期、大幅な円安により増益を見込む自動車産業でさえ、国内での設備投資には慎重だ。かつての円高に懲りてか、海外に生産拠点を移す方針を変更する企業は見当たらない。

アベノミクスの好スタートで、期待が集まる成長戦略である。選挙目当てではなく、内外の評価に耐える戦略にしてほしい(参考文献:信濃毎日新聞)。