[国内景気動向]
(1)黒田総裁「景気回復宣言」 ***
日銀の黒田総裁が、景気の先行きに自信を深めている。最大の懸案であった市場の混乱が収まったのを追い風に、参院選さなかで政権を後押ししてみせた。一方、賃上げへの企業の動きは鈍く、民主党の攻撃材料ともなる政権の泣き所となっている。
総裁は「全員一致で賛成しており、政治的うんぬんということはない」と、11日の会見で、株高円安により盛り上がった景気回復の期待が経済の実態を一変させたことをアピールした。
厚生労働省が2日に発表した5月の毎月勤労統計調査では、所定内給与は前年同月比0.2%減と12カ月連続で減少し、マイナス圏に沈んだままだ。しかし、黒田総裁が自信を見せるのは「いろいろな指標がほとんどすべて上方に見直されている」からだ。乱高下した株価や長期金利は、大規模な金融緩和の金利引き下げ効果が「今後とも累積的に強まっていく」との総裁自身の言うとおり、落ち着きを取り戻した。1日の日銀短観でも、出遅れていた大企業の設備投資計画が上方修正され、7月の地域経済報告でも、全国9地域のうち8地域の景気判断を上方修正した。
経団連が5月にまとめた大企業の夏のボーナスは、昨年比で7.37%増の84万6376円で、伸び率は過去2番目となった。しかし、ボーナスや残業代は所定内賃金には含まれない。黒田総裁は、今後の企業対応に好循環達成への望みを託した。
今月2日の中央最低賃金審議会では、田村厚生労働省が厚相として3年ぶりに出席し、「経済の好循環を持続させるため、最低賃金の引き上げをお願いしたい」という異例のお願いは、賃上げの行方が政権の命運を左右しかねないことの裏返しでもある(参考文献:信濃毎日新聞)。