[国内景気動向]

(1)日本の低成長を招いた4要因―佐和隆光(1/7) ***

安倍政権は、デフレ脱却と経済再生に向け、財政金融政策の総動員で臨む決意を表明している。

過去20年の日本の実質経済成長率は平均年率0.9%、名目経済成長率は平均年率でマイナス0.2%という具合に、極度の低成長が20年余り続いている。バブル崩壊は91年3月に始まったのだが、それ以降の日本経済がゼロ成長に陥った4つの理由を挙げておこう。

第一に、乗用車の世帯普及率が80%となり、飽和状態に達したことである。乗用車の普及は、多くの素材産業を潤し、至る所にあるサービス・ステーションに大量の雇用を生み出す。このように、乗用車の普及がもたらす産業関連的波及効果は極めて大きい。1973年の石油ショック以来90年度に至るまで、平均年率4.2%という比較的高い成長率を維持できたのは、乗用車の順調な普及によるところが大きかった。事実、乗用車の世帯普及率は70年度の30%から91年度に80%2003年度に86%に達したものの、05年度に81%に落ち込み、その後は83〜85%で推移している。

第二に、過去20年間に普及した新製品の大部分が、携帯、デジカメ、DVDプレーヤー、パソコンなどのデジタル製品に限られていたことである。これらの製品の普及の産業連関的波及効果は極めて乏しい。また、たとえば、デジタルカメラはフィルムカメラを締め出すように、これらの製品は差し引きゼロで、内需の増加は微々たるものに過ぎない。

第三に、電機業界が典型であるように、日本の製造業各社が、韓国、台湾、中国の猛追にあい、空前の苦境に追い込まれている事である。かつて、日本が欧米各社に追いつき、追い越したのと同じことが繰り返されている。機械製品の場合、リバース・エンジニアリング(分解して仕組みを知り、同じものをつくること)が可能なため、後発国が先発国に追いつき追い越すのはたやすい。

第四に、古典的な財政金融政策の有効性が失われたことである。経済の成熟化により公共投資の乗数効果は低下している。一方、かつて日銀の速水総裁が「水を飲みたくない馬を水場に連れて行ってどうするのですか」といったとおり。金融緩和の効果も薄れたといわざるを得ない。

かつて日本に追い越された欧米諸国が、いかにして一人当たりGDP競争で日本を逆転しえたのかを参考にして、古典的財政金融政策を超える、有効な定性的マクロ経済政策を考えなければならないだろう(参考文献:信濃毎日新聞)。


[ユーロ圏経済]

(1)債務危機4年目、欧州実体経済回復遠く(1/8) ***

2009年秋のギリシャ政権交代に端を発する欧州債務危機は、4年目に入り、単一通貨ユーロの制度的欠陥は徐々に修正が試みられてきた。だが、危機脱出のカギを握る実体経済の回復には、なお時間がかかりそうだ。

欧州連合(EU)の欧州委員会で経済政策を担当するレーン副委員長は、英紙に寄稿し、緊縮路線継続への理解を求めた。だが、相次ぐ増税や歳出削減による経済への疲弊は深刻だ。ギリシャの景気悪化は今年で6年連続が見込まれるほか、ユーロ圏第3位、4位の経済規模を持つイタリア、スペインも2年連続の悪化が予想される。2位のフランスもマイナス成長に陥る恐れが、日増しに高まっている。

長引く不況に、各国国民の不満は高まる一方だ。金融市場が今後注目するのは、スペインがユーロ圏諸国への支援要請に踏み切るかどうかだ。スペインは昨夏、国債金利が急騰し、財政破たんが現実味を帯びた。ドラギ欧州中央銀行総裁が「ユーロを守るためならば何でもする」とけん制し、無制限の買い支え策を発表し、市場は落ち着きを取り戻し、支援要請への動きは止まった。しかし、いずれ支援要請は不可避との見方は根強い。最大の焦点は、危機再発時に欧州中央銀行がスペインを支えきれるかどうかだ(参考文献:信濃毎日新聞)。


[自動車産業]

(1)2012年中国新車販売4.3%増(1/12) **

2012年の中国新車販売台数は、前年比4.3%増の1930万6400台だった。伸び率は2年連続で1ケタの低水準にとどまった。景気低迷で個人消費が鈍ったことに加え、尖閣諸島をめぐる日中関係の悪化で日本車の販売が落ち込んだことも要因である。中国市場の減速は、世界の自動車メーカーの競争激化を招き、各社の中国戦略に影響を与えそうだ。

一方、中国の新車販売は4年連続で米国を上回り、国別の世界一を維持した。年間新車販売台数として、初めて1900万台を超えた。欧州全体の販売台数を上回ったとの予想もある。

乗用車市場での日本車のシェアは11年に19.4%と海外勢ではトップだったが、12年は日中関係悪化の影響で16.4%に後退し、ドイツ(18.4%)に抜かれ2位に転落した。日系メーカーの販売が軒並み前年割れする一方、欧米勢や韓国勢は着実にシェアを伸ばした(参考文献:信濃毎日新聞)。