[物価]

(1)インフレの弊害は本当かー高橋洋一(2/27) ***

インフレの社会コストは経済学の教科書でしばしば取り上げられる。インフレの社会コストを経済学者は小さく見るが、一般の人は心理的なものだろうが大きく見る傾向にある。もちろん、経済学者もハイパーインフレについては大きなコストがあると考えるが、年率5%にもならないようなインフレではほとんど問題にならないとする。

経済学者はインフレの社会コストを、価格を書き直す「メニューコスト」、現金を保有するときに目減りするコストなどを挙げる。学者によりいろいろなモデルでの計算があるが、インフレ率2%程度でインフレの社会コストは最小となり、GDPの1%程度というものが多い。ここからインフレ率が1%程度かい離すると、インフレの社会コストはGDPの0.2%程度変化する。例えば、インフレ率マイナス1%のデフレからインフレ率2%のマイルド・インフレになると、社会的コストはGDPの1.6%から1%へと減少するというのが経済学者の意見となる。

アベノミクスでインフレ予想が高まりつつあるが、まず資産価格が上昇するため、潤うのは資産家や富裕層だけという指摘がしばしば見られる。しかし、必ずしもそうではない。

デフレからマイルド・インフレになって賃金はどう変化するだろうか。データを示そう。1971〜94年までのマイルド・インフレ時代と95〜2011年までのデフレ時代に、それぞれ賃金上昇率とインフレ率を比較し、前者が大きい場合「労働者の勝ち」としよう。マイルド・インフレ時代は21勝3敗、デフレ時代は5勝12敗だった。このように、マイルド・インフレの方が労働者は勝つのである。こうして、マイルド・インフレを罪悪視する必要はないのである(参考文献:夕刊フジ)。