[中国経済]

(1)国家資本主義、守るのは繁栄か体制か(8/21) ***

脱デフレのアベノミクスを脅かす伏兵は、中国かもしれない。バブルが壊れ中国がデフレに沈めば、世界不況に逆戻りしかねない。リーマン危機を跳ね返したかに見えた国家資本主義が揺れている。

中国の改革開放を長年支援してきた世界銀行と中国の国務院開発研究センターが、昨年2月に共同発表したリポート「中国2030」の中で、こんな記述がある。中国の成長鈍化は避けられないとしたうえで、「突然の減速が高成長で隠されていた銀行、企業、各級政府の非効率や、予期せぬ負債を露呈させ財政金融危機を引き起こすこともある」と、ハードランディングの可能性を否定しない。

リポートは、中国が中所得国から高所得国になるための改革を提案する。国有企業がやり玉に挙がる。4社に1社以上が赤字で、生産性の伸びは民間の3分の1だ。経営者は官の非公式の指導を受け、銀行融資や商機へのアクセスや、競争からの保護などで優遇されているとする。国有企業は90年代にリストラが進められたが、昨今は、民間企業を圧迫する「国進民退」が問題になるほど盛り返した。リーマン危機後の景気対策4兆元(約60兆円)も、国有企業が独占するインフラへの投資が多く国進民退に輪をかけた。米フォーチュン誌が8月に発表した世界企業の総収入が基準のランキング「グローバル500」に、中国の85社が入り、うち国有企業が78社だった。民間企業は7社にすぎなかった。

世銀リポートは、国有企業の役割を見直し、特定分野の独占排除、民間企業の参入障壁引下げ、金利の自由化など、市場経済化の完遂を求める。メッセージは明らかだ。「中所得国のワナ」イコール「国家資本主義のワナ」であり、国家と資本主義の癒着を断てということだ。

米国の政治学者イアン・ブレマーは、著書「自由市場の終焉」で「国民の繁栄と体制の安泰、どちらか片方を選ぶよう迫られたら、国家資本主義国の政府は判で押したように体制の安泰を選ぶはずだ」と書いている。中国共産党は、秋に開く中央委員会第3回全体会議で、経済改革の方針を決めるようだ。守るのは繁栄か、体制か(参考文献:日本経済新聞)。