[競争政策]
(1)メーカーの価格指定条件付き容認―経産省懇談会(8/17) **
経産省は、メーカーの店頭での価格指定を認めることで小売市場の安値競争に歯止めをかけ、デフレ脱却を確実なものにしたい意向だ。また、メーカーの適正利益を確保することで製品の開発投資を活発にし、競争力の強化につなげたい狙いもある。
しかし、独禁法を所管する公正取引委員会は「流通業者の競争を阻害し、消費者の利益を損なう恐れがある」と慎重な立場だ。専門家の間でも、市場競争への悪影響を懸念する見方が強い。現在の独禁法の指針は、メーカーが小売り間の競争を制限したり市場を閉鎖的にしたりするケースを問題にしている。指針は、市場開放と消費者利益確保の観点からつくられている。
経産省の有識者懇談会の報告書では、メーカーによる価格指定を禁じた現行の指針について、インターネットの普及や業界再編で流通業者の価格交渉力が強まったと指摘し、新製品を対象にメーカーの価格指定を認めている欧州並みの規制緩和を提言した。経産省は「発売直後の価格指定はメーカーの開発投資の回収に有効」との立場だ。
価格の他、現行では制限される場合がある商品や販売地域の指定についても報告書は、メーカーと小売りが一体的に販売戦略を展開した方が、消費者、企業の双方の利益向上につながるとして、見直しの必要性を強調した。
利益確保やブランド維持に苦心するメーカー側では現行制度への不満が根強い。独禁法違反を犯してまで販売価格に関与するメーカーがあるのは、焦燥感の表れでもある。大手小売りによる低価格競争が中小の小売業者に与える悪影響を指摘する声もある。
しかし、消費者利益、市場競争のメリットを考えれば、安易なメーカーによる価格指定は受け入れられないであろう(参考文献:信濃毎日新聞)。