[企業部門]

(1)9月、中国の新車販売激減(10/10) ***

日系自動車メーカーの中国での新車販売台数は9月、トヨタがほぼ半減となるなど、大きく落ち込んだ。日本製品の不買運動などを背景に、大幅減が長期化すれば各社の経営に大打撃となることが避けられない。ただ、各社は今後の成長期待を背景に中国へのシフトを強めており、リスクがあっても撤退はあり得ないのが実情だ。日系メーカーは、当面試練の時が続きそうだ。

トヨタや日産など、大手6社の11年度の中国での生産台数は約330万台にのぼり、世界生産の約16%を占めた。日産は世界生産の4分の1に達している。販売面でも、工場を持たない富士重工業を加えると、11年度は計約340万台に達し、世界販売の約16%を占め、中国はお得意様だった。

しかし、9月半ばに尖閣諸島の国有化を巡って反日デモが激化し、不買運動が起こると販売は急減した。在庫をさばけず、生産調整のため工場生産ライ業が相次いだ。

[中国での9月の日系自動車メーカーの新車販売台数]
日産自動車 76,100台(前年同月比35.3%減)
トヨタ自動車 44,100台(同48.9%減)
ホンダ 33,931台(同40.5%減)
スズキ 16,020台(同42.5%減)
マツダ 13,258台(同34.6%減)
三菱自動車 2,344台(同62.8%減)
富士重工業 1,857台(同64.5%減)

ただ、日系メーカーの中国生産は現地企業と合弁のため、中国側にとっても打撃となる。雇用面での打撃も大きいため、近い将来の不買運動の収拾に期待がかかる。大手証券アナリストは、「楽観的にみると、12月までに日本車市場は正常化する」とみるが、10〜12月期の市場シェアの大幅減少は避けられないと分析する。

今年4月に中国専用ブランド「ベヌーシア」を売り出した日産の片桐副社長は「中長期的に中国は伸びる。基本的な戦略を変えるつもりはない」と話す。


[ユーロ圏経済]

(1)ユーロ圏金融安全網発足(10/9) ***

欧州連合(EU)のユーロ圏17か国の財務相は8日、常設の金融安全網「欧州安定メカニズム(ESM)」理事会の初会合をルクセンブルクで開催し、ESMが正式に発足した。単一通貨ユーロを導入する国が財政難に陥った場合に、金融支援を行いながら財政再建に導く「欧州版の国際通貨基金「IMF」」的な存在となる。

財政統合が十分でない通貨同盟であるユーロ圏の欠陥を補完し、危機拡大を封じ込める組織として、欧州債務危機対策で中核的な役割を果たす。欧州中央銀行(ECB)が打ち出した財政難の国の国債買い支え計画は、ESMの発足が前提となっており、EUの危機対応制度は強化される。

ESMの主な機能は、

@ 財政危機の国への緊急融資
A 財政危機国の国債引き受け
B 予防的支援としての融資
C 銀行の資本増強のための政府を通じた金融支援

さらに、ユーロ圏の銀行の一元的体制が発足すれば、ESMから銀行への直接の資本注 入が可能になる。

EUには金融安全網がなかったため、ギリシャ支援など危機発生以来一時的措置を繰り返し、この間に危機は拡大した。ESMが発足したことで、今後の焦点は、危機に陥った国の財政再建とユーロ圏全体の財政規律強化の進展に移る。