[国内景気動向]
(1)7〜9月期GDP年率3.5%減(11/13) ***
内閣府が発表した7〜9月期のGDP速報値は、実質で前期比0.9%減、年率換算で3.5%減だった。マイナス成長は9か月ぶりだ。世界景気減速による輸出低迷で年率0.3%増だった4〜6月期から急減速し、日本経済が景気後退局面に入ったことが鮮明となった。マイナス幅は、東日本大震災が発生した11年1〜3月期の2.1%減(年率8.0%減)以来の大きさとなる。
政府は、デフレ脱却に向けた関係閣僚会議を開き、補正予算の編成を含め、追加的な経済対策の本格検討に入った。前原経済財政担当相は、政府として景気後退局面に入ったことを認めた。
GDPの内訳は、欧州やアジアなど主要輸出先が軒並み不振だったほか、日中関係の悪化も響き、輸出が前期比5.0%減と大幅に減少した。個人消費は、エコカー補助金終了に伴う自動車販売の減少やテレビ販売の下振れで0.5%減と縮小した。需要低迷で設備投資も3.2%減と落ち込んだ。大震災の復興事業で公共投資は4.0%増、住宅投資は0.9%増と好調だったが、景気押し上げ効果は限定的だった(参考文献:信濃毎日新聞)。
[財政政策]
(1)民主党政権3年2カ月の経済政策(11/16) ***
政権交代から3年2か月で、民主党政権は衆院解散・総選挙という区切りを迎える。経済政策では「コンクリートから人へ」を旗印に家計にお金を流すことを重視したが、財源をねん出できず、看板政策は相次いで頓挫した。デフレからの脱却は実現せず、景気は今年後退局面に入った。公約にはなかった消費税増税法成立という成果だけが際立った。
欧州債務危機に伴う世界経済の減速に有効な打開策を示せず、外需の減少とともに日本経済は失速した。歴史的な円高で国内製造業は打撃を受けた。
看板だった家計重視の政策の調整は、低迷を続けた。09年衆院選の公約は、総額16兆8千億円に上る必要財源は無駄を排除し、既存の予算を組み替えることで確保するとし、消費税増税は封印した。しかし、公共事業は削減したものの、減額に法律改正が必要な義務的経費の壁は崩せなかった。子供一人当たり月2万6千円の子ども手当は満額に遠く及ばず、最終的に自公政権からの児童手当に戻った。高速道路の無料化も一部の路線で実施しただけであった。実現できたのは高校授業料の無償化など一部にとどまった。
東日本大震災に直面すると、公共事業など復興需要頼みの経済運営を迫られた。補正予算を合わせた11年度の歳出は約107兆円に上った。大型公共事業も次々と復活し、被災地以外への予算流用批判も招いた。
不透明な経済運営の背景には、経済政策の司令塔が不在だったことがある。予算の大枠を財務省主導で定める概算要求基準(シーリング)など、伝統的な手法も次々と復活したのであった。
[企業部門]
(1)トヨタ、タイ・インドネシアの生産拡大(11/14) ***
トヨタ自動車が東南アジアで攻勢を強めている。豊田社長が11月上旬にタイ、インドネシアを相次いで訪れ、生産拡大の方針を表明した。親日的で投資しやすい環境を生かし、世界的な生産拠点に育てる。
東南アジア市場は、日本の自動車メーカーにとり金城湯池だ。日本車は中国など新興国市場で欧米や韓国車との競争が増す一方、タイで約90%、インドネシアで約95%の占有率を誇る。背景には、日本メーカーが現地政府と親密な関係を築き、優遇措置を受ける車種を生産してきた経緯がある。トヨタの豊田社長は訪問先のバンコクで、タイでの生産を近い将来に100万台に引き上げる方針を表明した。日米に次ぐ規模にする。いすゞや日産も生産能力の増強を発表している。日中関係の先行きに不透明感が強まる中で、今後も東南アジアが重要性を増すのは確実視されている。
バンコク近郊にあるトヨタのバンボー工場では、ピックアップトラックなど新興国向け戦略車「IMV」シリーズを生産し、100カ国超に輸出するが、部品メーカーなどと取り組む抜本的なコスト削減に余念がない。韓国メーカーがアジア全体で少しずつ進出しており、作り方や販売価格が将来の危惧だからだ。
タイでは、小型車でどう利益を出すかも課題だ。小型車は政府のエコカー制度で税金を軽減され販売が伸びているが、高収益のピックアップトラックと違い、単価が安く利幅も薄い。
インドネシアは、東南アジアではタイに次ぐ日本車の生産規模だ。豊田社長は、グループ5社の首脳とともにユドヨノ大統領と面会し、グループで計1千億円の投資計画を説明し、インフラ整備や中小規模誘致で支援を要請した。狙うのはトヨタを頂点とし、その下に部品メーカーが連なる「ピラミッド」のインドネシア版だ。大統領との面会を終えた豊田社長は、地域に根ざし経済発展に寄与する姿勢を強調した(参考文献:信濃毎日新聞)。
(2)トヨタ車150万台超リコール、部品共通化落とし穴(11/15) ***
トヨタ自動車が国土交通省に届け出たリコール(無料回収・修理)対象台数が151万8098台(海外分を合わせたリコール対象は14車種、計276万台)と国内で過去最多となったのは、複数車種での部品や設計の共通化が広がっているためだ。費用を削減するためだが、リコールの場合に対象台数が大きく膨らむ落とし穴の危険性もはらんでいる。
トヨタは、3週間前に今回のリコールとは別に世界で過去最多の14車種計743万台を回収対象にすると明らかにした。
4月に、複数車種間での基本部品の共通化率を高め、原価を大幅に減らしていく方針を掲げた。部品の共通化の中で、開発時にこれまで以上の厳しい評価を行うことで世界最高水準の品質確保を目指していくとした。
部品の共通化を巡っては、フォルクスワーゲンが先行し、グループ全体で最大7割の共通化を目標に掲げている。日産自動車も車種を超えて、部品の共通化を進める車両設計技術を導入し、来年発売の商品から採用する。共通化が進めば、新車開発費が従来と比べ約3割低減できると見込んでいる。