[ユーロ圏経済]
(1)欧州利下げに限界論、南欧の金利なお上昇(8/1) ***欧州中央銀行(ECB)による従来型の金融政策が行き詰ったとの見方が強まっている。政策金利を引き下げても、南欧の銀行貸出金利はむしろ上昇し、供給した大量のマネーも企業や家計に行き渡らない。国債購入による利回り抑制など、通常の金融政策の枠を超えた施策を打ち出さざるを得ないとの期待が生じている。
ECBは、7月5日、政策金利を0.25%引き下げ0.75%にしたが、貸し出し拡大などの実体経済への影響は見られない。そして、波及の程度が国により大きく異なっている。短期の貸出金利はドイツもスペインも政策金利とほぼ連動してきたが、債務危機の深刻化とともに南欧の貸出金利は下がらなくなっている。信用力の低下した金融機関の調達コストが上昇しているためだ。昨年11月からの政策金利の引き下げに呼応し、企業への貸出金利(期間1年以下、金額100万ユーロ以下)は、ドイツでは昨年10月の3.91%から5月の3.39%に低下したのに対し、スペインでは同期間に4.88%から5.14%に上昇している。国債利回りの影響を受ける長期の貸出金利の開きはさらに大きく、5月時点で2.5%以上の開きがある。
ドラギECB総裁は、金融政策が国債利回りに影響を与えないならば、国債を購入して利回りを下げ、貸出金利を低下させる可能性を示唆した。昨年12月と今年2月に実施した銀行への大量の資金供給は、銀行の流動性確保には寄与したが、企業や家計への貸し出しは伸びていない(参考文献:日本経済新聞)。