[ユーロ圏経済]

(1)スペイン不安、地方が増幅(7/24) ***

スペインの地方財政への不安が再燃してきた。欧州連合(EU)のユーロ圏によるスペインへの支援が決まったが、金融市場ではスペインの地方財政の悪化から、国全体が支援に追い込まれるとの観測が高まっている。

スペイン紙によると、6州が政府への支援要請に入った。スペインの州政府は、今年後半に約150億ユーロの債務償還を控え、なかでも経済規模が大きいカタルーニャとバレンシアの両州は多額の債務を抱える。欧州債務危機の影響で、スペインの州政府は市場からの資金調達が困難な状態が続いており、中央政府からの支援に追い込まれつつある。

中央政府は、財政難の州政府の債務償還と財政赤字削減を支援する目的で、総額180億ユーロの緊急融資基金を設置した。中央政府は、追加の歳出削減を条件に融資に応じる見通しだ。

スペインは地方分権が進んでおり、州政府は外交や軍事などを除き、教育や医療など多くの予算を自らの裁量で管理できる。その結果、赤字が膨らみ、17の州でスペイン全体の財政赤字の3分の2を占める。

ただ、中央政府にも余裕があるわけではない。180億ユーロの基金の内訳は、60億ユーロが宝くじの収益で、その他は国営企業の民営化や資産の売却などで資金を工面する構えだが、不足分は市場から調達する方針だ。しかし、10年国債利回りは7%をはるかに超え、安定した資金調達は難しい。

ユーロ圏諸国は、スペインの銀行部門に最大1000億ユーロを支出する覚書に合意したが、金融市場でスペインの地方財政への不安が高まった。欧州安定メカニズムの設立が9月にずれ込むなど、銀行部門のへの支援計画の遅れも不安に拍車をかけている。

スペイン中央銀行は、4〜6月期のGDP成長率が前期比0.4%減だったと発表した。3期連続でマイナス成長だ。 「ユーロ圏各国からの支援の遅れ」「地方財政の悪化」「景気後退」という悪材料が次々と現れる中、悲観的な市場関係者は増えている。


(2)南欧、財政悪化進む(7/24) ***

欧州連合(EU)統計局は、加盟27カ国の今年3月末時点での債務残高を発表した。ポルトガル、スペイン、イタリアなど南欧諸国は、3ヶ月前に比べGDP比で3ポイント超も増加した。各国は財政再建に取り組んでいるが、実体経済が厳しく、財政状況の悪化が浮き彫りになった。

EU27カ国のうち21カ国の債務残高が、3ヶ月前に比べ上昇した。スペインの債務残高はGDP比72.1%でユーロ圏全体よりも低いが、直近1年間で7.4ポイント増加した。2013年までマイナス成長が続く見通しで、今後も急ピッチで債務残高が増加する可能性は高い。

ギリシャの債務残高は132.4%で、EU内での最高水準が続いた。しかし、3月のEUなどとの合意により、債務削減を実施したことから、残高は3ヶ月前に比べ33ポイントの大幅減となった。しかし、4月以降経済は厳しさを増しており、債務残高が増加し始める可能性が高そうだ。

イタリアは債務残高が2番目に高い123.3%に達した。モンティ首相は、財政再建や構造改革に取り組んでいるが、財政悪化は止まっていない。

ポルトガルは、EUや国際通貨基金の支援を受け財政再建中だが、債務残高は111.7%に上昇した。

ドイツの債務残高は81.6%となった。前年比で0.5%減少し、財政状況が安定している。