[国際景気動向]

(1)堅調景気、欧州の影、円高重荷に(7/8) ***

日本経済は緩やかに回復している。復興需要など内需がけん引し、景気の足取りはしっかりしている。ただ、欧州債務危機の影響で円高圧力は残り、中国経済の減速や夏場の電力不足という懸念がある。日本経済は、耐久力が試される局面に入った。

若年の失業率が5割超のスペインでは、フォード・モーターが自社工場で4000人規模の一時帰休を実施した。マドリード市内の五つ星ホテルの従業員が嘆いた「最近はお客の入りが悪いような気がする」。そのため、ホテルは宿泊客を確保するため、宿泊代金の値下げを迫られている。

欧州連合(EU)は、金融安全網がスペイン銀行に直接資本注入することで合意した。ただ、スペインの不良債権の割合は、4月に8.72%と94年以来の高水準だ。不良債権処理はこれからが本番で、景気の底入れには時間がかかる。

ギリシャ、スペイン、ポルトガル、イタリアの南欧4か国は、12〜13年はマイナス成長になる見通しだ。足元では、欧州が最大の輸出先である中国で減速感が強まる。

コンテナ輸送の世界最大手マースク・ライン(デンマーク)が昨年10月に始めたアジアー欧州間の定期航路「デイリー・マースク」は、最近では運航を週7便から6便に縮小し、デイリーではなくなった。中国から欧州への輸出が、昨年1〜9月期に前年同期比18.2%増だったが、今年1〜3月は1.8%減に変わった。

国内需要を上回る投資で生産能力を増やし、輸出をてこに高成長を遂げる中国の成長モデルは、欧州という外需の不振で通用しにくくなっている。

米国経済は11年後半から雇用と個人消費が持ち直してきた。だが、足元では雇用の回復ペースはきわめて緩やかにとどまり、住宅需要の戻りも鈍い。

一方、日本経済は堅調だ。1〜3月期の実質GDP成長率は年率4.7%だ。4〜6月期も年率1.9%の予想であり、1%未満といわれる潜在成長率を上回ったとの見方が多い。米欧より安定している。シニアが主役の個人消費は好調であり、企業は攻めの投資を続け、東日本大震災からの復興需要も内需を下支えする。

しかし、世界経済の低迷は日本経済に影を落とす。日本から欧州への輸出は11年度に7.4兆円と輸出全体の1割どまりだ。ただ、金融市場で欧州の信用不安が再燃し、再び円高・ユーロ安が進めば価格競争力も下がる。井関農機は、12年度の欧州での売上高がユーロ安のために前年比9%減ると見込む。

より大きなリスクは、中国経済の減速だ。中国が欧州に輸出している完成品には、日本製部品が多く使われている。中国から欧州への輸出が減れば、日本から中国への部品輸出も打撃を受ける。

現在は、今年度の前半は内需が支え、後半からは海外景気の回復で輸出にけん引役が移るというのがエコノミストの共通した見方だが、外需の下押し圧力が強まっても回復基調が保てるか。内需主導の景気の持続力が問われている(参考文献:日本経済新聞)。