[金融情勢]
(1)インフレ目標根強い誤解(12/8)―岩田規久男 ***
今回の衆院選では、日銀に対する政策が争点になっている。そのきっかけは、自民党が政権公約で掲げた金融政策だ。それは、
@ デフレ・円高からの脱却を最優先に名目3%以上の経済成長を達成
A 欧米先進国並みの物価目標2%を政府・日銀による政策協定で決める。
B 日銀法の改正も視野に政府・日銀の連携強化の仕組みを整える。
というものだ。
この金融政策の枠組みは、「インフレ目標」と呼ばれるもので、90年代以降、多くの国や地域では、当たり前の枠組みとなっている。しかし、日本では、インフレ目標への誤解が根強い。誤解を正しておきたい。
第一は、政府がインフレ目標の数値を決定することは中央銀行の独立性を侵害するという誤解である。しかし、多くの国・地域の仕組みは、インフレ目標値は政府が決めるか、政府と中央銀行が協議して決め、その目標達成手段は中央銀行が政府から独立して決めるというものである。
新日銀法の様に、中央銀行が政府から独立して自ら目的を決めて金融政策を運営することを可能にすれば、達成時期を明記しないままデフレ脱却と言い続け15年近くもの間0%以下のデフレを続けることを許してしまう。
第二は、インフレ目標を採用するとハイパーインフレになるという誤解である。しかし、インフレ目標では、物価上昇率に上限が画されている。自民党の政権公約では、上限は2である。したがって、実際の物価上昇率が中期的(1年半程度)に2%を超えるようであれば、金融引き締め政策が採られる。つまり、国債の無制限買入れは、物価上昇率が2%になるまでのことということになるのである。
第三は、インフレになると賃金が上がらず、物価だけが上昇するため生活が苦しくなり、デフレ下では賃金が上がらなくても、物価が下がるため生活は楽だという誤解である。デフレが続いている日本では、賃金が物価下落以上に下落している、そのため、人々の実質可処分所得は減少しているのである。一方、インフレになると雇用需要が増大して失業率が低下し、過去のデータからは失業率が3%台半ばまで低下すれば、賃金がインフレ率以上に上昇して、人々の実質所得は上昇することが予想される(参考文献:信濃毎日新聞)。
[製品開発]
(1)2012年のヒット商品―エコカー(12/6) ***
自動車の売れ筋では、低燃費と小型化の流れが加速した。とりわけ、トヨタの小型HV車「アクア」とホンダの軽自動車「N BOX(エヌ ボックス)」の快走が際立った。
トヨタが昨年12月に発売したアクアは、全長が4メートルを切りプリウスよりも一回り小さく、燃費はガソリン1リットル当たり35.4キロと、HVとして最高の性能を達成した。エコカー補助金が追い風となって注文が殺到し、10月には新車ランキングでプリウスを抜き、初めて首位に立った。
N BOXは、燃料タンクを床下中央に置くセンタータンクや、エンジンルームの小型化などにより、軽自動車として最大級の室内空間を確保し、販売は4月から5カ月連続で軽部門の首位となった(参考文献:信濃毎日新聞)。
[アメリカ経済]
(1)米失業率7.7%に低下(12/8) ***
米労働省による11月の雇用統計によると、失業率は前月比0.2ポイント低下して7.7%となり、08年12月以来3年11か月ぶりの低水準となった。景気動向を敏感に反映する非農業部門の就業者数は14万6千人増と、市場予想を大きく上回った。
緩やかな景気回復に伴い、雇用情勢の改善が続いていることが示された。ただ、雇用改善の回復は依然として緩慢だ。年明けに財政が急激に引き締められる財政の崖(減税の終了と政府支出の削減)への対応を巡る不透明感で、企業が新規採用に慎重となっており、今後の情勢は予断を許さない。
11月の就業者数は、民間雇用が14万7千人増で、雇用改善の目安とされる10万人を上回った。内訳は、サービス業が16万9千人増で、小売業や企業向け専門職、教育・医療の分野が好調だった。ハリケーンの影響が出たとみられる製造業は、7千人減とさえなかった。政府雇用は1千人減だった(参考文献:信濃毎日新聞)。