[EU経済]
(1)EU,ASEAN各国と交渉加速(5/23) ***欧州連合(EU)が、東南アジア諸国連合(ASEAN)各国との自由貿易協定(FTA)交渉を加速させる方針だ。ASEAN全体とのFTAを断念し、加盟国と個別に交渉する戦略に転換した。環太平洋経済連携協定(TPP)をにらんで米国に対抗して、対アジアビジネスの足固めをする思惑だ。
EUは07年にASEANとのFTA交渉を始めたが、ミャンマーの人権問題などを理由に09年に交渉を中断した。地域間FTAを棚上げし、加盟国ごとに結ぶ方針に切り替えた。デフフト欧州委員は、シンガポールとは年内、マレーシアとは12年に、その他は13年中に妥結できるとの展望を示した。EUの手法は、シンガポールなどとのFTAで成功事例を作り、芋づる式に他国を交渉に引き出すドミノ戦略だ。
EUは、ASEANにFTA網の拠点としての重要性を見る。ASEANは日中韓豪印などとFTAを結び、東アジアの生産ネットワークで大きな役割を担う。あるEU筋は、「アジアは世界の成長センター。日米のTPPへの動向を注視している。EUも対策を急がねば」と語る。
シンガポール、マレーシアは、TPP交渉国だ。EUは韓国とのFTAが7月に発効し、インドとも年内の妥結を目指す。ASEAN各国とのFTAで、TPPに連なる自由貿易圏の一角に食い込めるとの判断だ。
ただ、交渉に前向きの国ばかりではない。タイは、EUからの酒類やタバコの輸入増を警戒する。飲酒・喫煙の抑制で医療費支出を抑えたいからで、EUとのFTAには比較的慎重とされる。インドネシア貿易相は、FTAには消極的だ。対中FTAによる安価な商品の大量流入で神経質になっている側面がある。そして、地域間のFTAを希望しているとされる。