[競争政策]

(1)電力効率化へ抜本改革をー競争力そぐ値上げ(5/16) ***

アルミニウムの精錬は、石油危機で電気代が上がったため、国内で一貫生産を手掛ける企業の大半は消えた。原発事故や原発の停止で夏場の電力不足が心配されている。今後は、電気の値上がりによる産業競争力への影響が大いに懸念される。第二、第三のアルミ産業が出ては困る。電力供給の効率を高め、電源の分散を促すような抜本改革が、賠償支援策の次の課題だ。

とにかく、電気代の値上げ要因は目白押しだ。原発賠償の枠組みでは、東電による賠償金の支払いを国や電力各社の資金で後押しする。東電の負担に上限がない上、国の財政も厳しく、結局は値上げで賄う部分も多いと見られる。

東電は、原発から火力発電への切り替えで、燃料費が1兆円増えるため、1割以上値上げする見通しだ。原発の廃炉でも1兆円超の費用がかかる。さらに、温暖化対策で高コストの風力・太陽光発電の活用を迫られる。

日本の電気料金は、韓国や中国の2倍以上だ。企業は国境を超えて産業拠点を選べる時代だ。

「日本は資源多消費の産業に頼らず、産業を高度化すべき」という主張は、長期的には正しい。だが、雇用を確保する工場を手放していいはずはなく、電気の値上げ幅を抑える手立てが何としても必要だ。

金融機関の貸し手責任を問うだけでなく、株主や社債保有者も応分の負担を分かち合うべきであるという議論があるが、金融市場を混乱させずにすむ方法があるならば検討課題だ。

さて、これまでの電力自由化で小売などを手がける特定規模電気事業者(PPS)という新規事業者が誕生したが、これが担うのは電力の全販売量の3%弱だ。送配電網の使用量が高く、PPSの販売価格の2割を占めるという。

大手電力会社間の競争もなきに等しい。驚くべき相互不可侵の状態だ。

競争を促す鍵は、送配電網を多くの事業者が使いやすくすることだ。切り札は、発送電分離だといわれる。小売りも完全に自由化して、新規事業者が伸びれば、電気の値上げが抑えやすい。