[EU経済]

(1)欧州景気、南北の差鮮明(5/14) ***

欧州景気の二極化が一段と鮮明になってきた。欧州委員会の経済予測によると、ドイツなど北部欧州の経済は先行きも堅調だが、ギリシャやポルトガルなどは12年まで精彩を欠く。財政難による信用不安を背景に、域内格差を抱えるユーロ景気の先行きは予断を許さない。

欧州委による11年のユーロ圏17カ国の実質成長率予測は1.6%、12年は1.8%だ。欧州委は「財政健全化と、競争力を高める構造改革を断固として実施する必要がある」と強調した。

国別にみると、ドイツなど北部欧州と、ギリシャ、ポルトガルなど南欧の格差がはっきりと浮かび上がる。ドイツは今年も2%の成長率を保つのに対し、ギリシャはマイナス3.5%と同国政府の想定より落ち込むと予測している。ポルトガルは11年がマイナス2.2%、12年がマイナス1.8%と2年連続でマイナス成長となりそうだ。不動産バルブ崩壊に苦しむスペインは、12年まで失業率が20%超という歴史的高水準が続く。ギリシャに次ぐ巨額の債務残高に苦しむイタリアも、独仏と比べ景気回復の勢いを欠く。

財政再建の進展度合いは、ドイツ、オーストリア、オランダなどは景気回復で税収が回復し、12年には「財政赤字のGDP比3%」というEU基準の達成が視野に入る。アイルランド、ギリシャ、ポルトガルなどの巨額の財政赤字を抱える国は、増税や歳出削減を急ピッチで進める方針だ。ただ、こうした財政再建が景気の下押し圧力となり、税収を減少させるという悪循環に入りつつある。