[中国経済]

(1)中国「内需主導へ転換」

開幕した中国の全国人民代表大会(国会に相当)で、温家宝首相は、貿易摩擦につながる輸出や投資主導の高成長路線から内需主導の経済モデルへの転換を強く打ち出した。消費拡大に欠かせないサービス産業の育成に重点を置き、労働者の所得を増やして購買力を高める。消費が拡大すると貿易不均衡の是正につながるが、人民元改革を通じ輸入物価を引き下げるなどの対策も必要になる。

中国の貿易黒字は、10年に1831億ドル(約15兆円)と依然高水準で、米国から批判を浴びている。中国が内需拡大し輸入を増やし、貿易不均衡の是正となる青写真を描く。

中国のGDPに占める個人消費の割合は4割弱と、約7割の米国に比べ小さく、拡大の余地は大きい。温首相は、都市部の低所得住民と農民向けの補助金を増額し、道路整備を通じ商品の流通を促進するなど具体的な対策に言及した。

温首相は、消費者物価の上昇を抑制する方針も強調した。食品価格高騰による庶民の不満を抑える狙いだが、消費者の消費意欲を高める目的もある。

今後の焦点は、人民元対策に移る。輸入物価の上昇を抑えるために、元相場の上昇ペースを加速させるとの見方もある。ただ、元相場が上昇すると、雇用吸収力が大きい輸出産業の経営に影響を及ぼしかねないジレンマもある。