[EU経済]
(1)通貨・通行、EU綻び(6/24) ***欧州連合(EU)首脳会議が、23日ブリュッセルで開幕する。ギリシャの財政危機と統一通貨ユーロの信用不安、アラブ諸国からの移民流入による欧州諸国間の国境審査復活が主要議題だ。経済統合、移動の自由というEUの理念を体現する制度の綻びを象徴する会議となる。
EU首脳会議は、ギリシャの財政危機で同国政府の財政緊縮策実施を条件に、昨年5月の第1次支援(1100億ユーロ)に続く第2次支援(1200億ユーロ)を行う方針を確認し、危機の封じ込めを目指す考えだ。ギリシャは、財政再建失敗で長期金利の流通利回りが年17%台に達し、市場からの資金調達が困難になっている。第1次支援は失敗に終わった。
欧州金融市場では、スペインやイタリア国債の流通利回りも上昇(国際価格は下落)し、通貨ユーロが下落している。
ギリシャ危機で市場の不安を拡大させたのは、民間投資家に大きな負担を求めるドイツの強硬な姿勢だった。穏健な解決を目指すフランスと対立する場面もあり、EUが結束してギリシャ問題に取り組む姿勢を見せなければ、市場の混乱を招くのは必死だ。
EUは市場の不安を和らげるため、昨年創設した緊急支援制度で、ユーロ圏の実質的な融資能力を現在の2500億ユーロから4400億ユーロに引き上げることでも最終合意する。しかし、市場は更なる危機拡大を見据えており、効果を疑問視する声も多い。
首脳会議は今回、域内の自由移動を保障する「シェンゲン協定」見直しで合意する。同協定は、EU非加盟3カ国を含む25カ国が参加し、国境でのパスポート審査などの相互撤廃を規定している。しかし、今後は、EU域外と接する国が移民の大量流入で国境管理に失敗した場合、国境審査の実施を最終手段として認める。
95年の協定発効後、本格修正は初めてだ。中東政変で出稼ぎ目的の移民約4万人がイタリアとマルタに上陸し、対応に苦慮したイタリアとフランスが協定の修正を求めていた。