[米国経済]

(1)けん引役の消費にかげり(6/5) ***

米景気に停滞感が広がっている。昨秋以降景気を牽引してきた個人消費にガソリン高や株式下落で不透明感が広がり、生産活動も減速している。焦点の雇用改善も足踏みが鮮明だ。連邦準備制度理事会(FRB)は、6月末に量的緩和策の第2弾を終了する予定だが、民需主導の自律回復に変調の兆しが出ている。

米消費者が価格に敏感になっている。原因はガソリン価格の高騰だ。米家計の月収に占めるガソリン代の比率は9%前後と、過去最高だった08年7月の10%に迫る。

FRBが昨年11月に始めた量的緩和策では、株価底上げにより米家計の純資産は昨年12月末時点で9月から2兆ドル増え、1〜3月もこの資産効果は続いた模様だ。だが、余剰マネーの流入で原油相場が高騰し、ガソリン高を通じ中低所得層の消費を圧迫する副作用が強まった。5月に入ると、頼みの株価も反落し、住宅価格は差し押さえ物件の流入で二番底の様相を呈している。ガソリン高、株安、住宅安の3つの逆風が吹き、個人消費を取り巻く現場の雰囲気は変わりつつある。

今後のポイントの一つは、原油価格の動向だ。一時は、1バレル114ドル前後まで上昇した原油価格は100ドル付近に反落した。ガソリン価格が昨年末の1ガロン3ドルまで間で下がれば、家計あたり月70ドル程度の余裕資金が生まれる。

もう一つのポイントは、雇用だ。これまで消費が改善を続けてきたのは、緩やかな賃金・雇用の増加で所得が増え、消費の裾野が広がってきたためだ。5月の雇用統計を受けて、金融市場は悲観に傾きつつある。

国内総生産(GDP)の7割を占める米消費が勢いを保つかどうかは、米景気の最大の焦点となる。