[経済体制]

(1) 南欧、見えぬ財政再建(7/13) ***

欧州でギリシャを起点にした信用不安が、スペイン、イタリアにも及んできた。これらの南欧諸国は財政赤字の削減計画を示しているが、市場の信認は乏しく、国債や通貨ユーロは投機的な売りを浴びている。南欧は、労働者への過剰な保護や高い失業率など共通の課題を抱える。

スペインの足元の財政事情は厳しい。2,010年の財政赤字は、対GDP比で9.2%だ。これは、欧州連合と国際通貨基金から支援を受けるギリシャやポルトガルに匹敵する高水準だ。政府は、信用の回復に向け昨春、公務員の人件費削減や増税などを柱に再建策をまとめた。今年の赤字のGDP比率を6%に抑える目標を据える。それでも市場が警戒を緩めないのは、5月の地方選で与党が敗れた地方政府が中央の指示に従わなくなる恐れから、財政再建に懸念が膨らむ。地方は、公的支出の3分の1を占める。

イタリア政府は、財政赤字のGDP比を今年の3.9%から14年までに0.2%まで縮小することを決めた。金融取引の課税強化などで増収を図るとともに、社会保障政策の見直しで歳出を削減する内容だ。ただ、首相の不祥事などで政権が動揺し、その実行力に不安が消えない。

イタリア、スペインの若年層の失業率は、ともに20%を上回る。雇用が改善しなければ政府による手当てが増すだけでなく、ギリシャのような深刻な社会不安を招く懸念もある。

スペイン財政は、07年ごろまでは黒字であり、公的な累積債務は約60%とEUの平均を下回る。イタリアは、自動車など製造業がもともと強く、ギリシャやポルトガルに比べ産業に厚みがある。両国とも市場の信任を得るには、財政再建に向けた改革の実行が急務である。