[経済体制]

(1)ソ連崩壊20年を経て、勝者・資本主義にも難題(7/3) ***

初の社会主義国となったソ連の崩壊から20年がたった。ソ連という国家はなんだったのか。世界の歴史に何を残したのか。

ソ連は、平等な社会の建設を掲げる社会主義思想の下、共産党の一党独裁体制を敷き、国家による生産手段の所有を進めた。自由なき平等をきわめて人工的、観念的に実現しようとした。そして、自由な意思を持つ人間の性質を完全に無視していた。

ソ連経済の欠陥は、国家が詳細な生産・分配計画を立てる中央指令型の計画経済を導入したことであった。国家による所有と均等な分配を前提にした制度の下では、競争や刺激という要素が欠けており、人々が働く意欲を持つことは難しかった。競争と私的所有のない効率的な経済システムは成立しない。

ソ連が世界に通じる製品を生産できたのは、欧米との競争にさらされた軍需関連産業だけであった。創造的な力は発揮されず、経済の低迷と一党独裁が爆弾となり、国家の崩壊をもたらすのは明らかだった。

ロシア革命は、資本家に搾取された労働者階級が担い手と考えられた。このため、世界中で労働組合の力が強まり、勤務時間の短縮など労働者の権利が重視されるようになった。社会主義が叫ばれ、資本主義もよりバランスの取れた制度になった。

しかし、平等な社会は計画経済や均等な配分ではなく、公平な機会を与えることで実現すべきだ。所得再分配の税制もよいが、質の高い無償教育の提供など人間としての出発点で平等を確保することが重要だろう。一部の欧州諸国では、この点を考慮した社会主義型の市場経済が形成されている。

社会主義への優位を証明した形の資本主義経済も多くの問題を抱えている。ギリシャやポルトガルでは財政危機が起き、日本もGDP比で約200%の債務残高があり、米国の債務も巨額だ。金融派生商品など金融部門も肥大化した。

ロシア革命の影響を受け社会主義となった中国やベトナムは、一党独裁を維持しながら発展している。中国は、土地を賃貸するなど資本主義的な手法を導入して外資を呼び込み、生活水準を急速に引き上げた。これは、社会主義ではなく、中国型資本主義というべきものだ。政治システムを現実に深く適応させることができれば、平和な方法で変質が進む可能性がある。

一方、ソ連崩壊後のロシアは、私的所有権や市民の権利、司法の独立が確立されていない。議会も国民を代表せず、与党・統一ロシアと官僚が一緒になって社会を支配している。こうした状況で、市場経済や民主化をどうやって実現できるのか。外見を変えても、本質にはソ連から変わっていない部分がある。唯一の展望ある選択肢は、欧州型の資本主義・民主国家になることだが、困難で長い道のりだ。