[欧米の財政]
(1)欧米諸国、財政赤字削減に苦闘(2月27日) ***
欧米諸国は、金融危機で財政出動を迫られ赤字が拡大した。放置すると市場の信任が低下し、ギリシャ危機の再来となる恐れがある。一方、赤字削減を急ぐと景気が後退し、国民の不満を招く。景気と両にらみで少しずつ進めるか、一気に切り込むか。どちらにしても、危機意識は同じだ。
米国のオバマ大統領は、10年間で1兆ドル超の財政赤字を削減する目標を掲げた。そして、13年までに財政赤字を半減すると公約した。頼みは歳入の増加だ。12年度の税収が、前年度比20.9%増加すると見込んでいる。減税の縮小、特定産業への課税強化、そして、景気回復による税収の増加だ。しかし、社会保障改革を避け、楽観的な成長予測による甘い見積もりに頼っているとして、財政収支の急速な改善には疑問の声が多い。
米国と比べ、ギリシャ危機を経験した欧州の方が大胆だ。政権交代で昨年5月に発足した英国のキャメロン政権は、14年度に向け歳出を年810億ポンド(約11兆円)減らす財政再建策を打ち出した。そして、付加価値税を20%へと2.5%引き上げた。
ドイツでもメルケル首相が、政権公約の所得減税を凍結すると宣言し、緊縮財政にカジを切った。そして、国内空港の利用者を対象にした航空税を導入した。
国際通貨基金(IMF)によると、米英独の10年の債務残高は対GDP比で7〜9割で、2倍もある日本より少ない。それでも危機感は強く、赤字削減の取り組みは早い。