[EU経済]

(1)ポルトガル、なお続く危機(4/17) ***

  ポルトガル政府が、欧州連合(EU)と国際通貨基金(IMF)に金融支援を要請した。同国は、今後800億ユーロ(約9兆6000億円)程度とみられる支援を受け、EUやIMFの管理下で財政の立て直しを目指すことになる。だが、財政支援への道のりは平坦ではない。

  財政再建を積極的に進めていたソクラテス首相は、3月に年金支給額の大幅削減を柱にした赤字削減策が議会に否決された。これにより、抜本的な財政再建が進められるかについて、市場の疑念が高まり、同国国債の価格が一段と下落した(利回りは上昇)。金利負担の高まりや資金繰りへの不安で、支援要請を余儀なくされた。

  ポルトガルは、70年代に植民地が次々と独立し、多くの利権を失い経済が失速した。86年の欧州共同体(EC)加盟後は、人件費の安さなどを武器に工場誘致や1次産品の輸出を進め経済成長を実現した。しかし、EUが中・東欧に拡大すると、労働コストの安さというポルトガルのメリットは失われ、産業競争力は低下した。

  99年のユーロ導入後は、低金利で何とか経済は持ちこたえていた。しかし、硬直的な労働市場、不十分な教育、非効率な公営企業、海外資本や農業に頼った産業などの構造問題が、世界的な景気の低迷とユーロ危機で一気に噴出した。財政赤字は急速に膨らみ、金融市場の信用を失い、自力再生をあきらめるに至った。

  EUとIMFは、ポルトガル政府と今後の再建策の協議を始めた。一段の増税と緊縮策の実行に加え、規制緩和や公営企業の民営化、さらには政権崩壊につながった年金の見直しなどが焦点となる。