[金融市場]

(1)円高是正の単独介入、持久戦に(9/16) ***

政府・日銀は15日、6年半ぶりの円売り・ドル買い介入を実施した。1ドル=82円台と15年ぶりの円高水準に急騰していた円相場は、午後には1ドル=85円台まで急落した。ただ、欧米のみならずアジア諸国からの積極的な支持があるわけではない。介入で一息つく間に、成長戦略を打ち出せるかどうかが鍵で、日本政府は円高圧力との持久戦を強いられそうだ。

財務省は、菅氏が再選され1ドル=82円80銭台まで円が急騰したところで実際に介入し、市場にサプライズを与えることに一応成功した。企業は歓迎している。日本企業は海外生産シフトしているが、依然として中国やアジアへの輸出に依存している。今後も、過度な円高への対応を望んでいる。

今回の円売り介入は、過去の例とは大きく異なる。95年の急速な円高時は、日米欧の協調体制が、03〜04年の介入時は当時の小泉ーブッシュの盟友関係が後ろ盾であった。今回は、協調介入はおろか、円売り介入をどこまで容認するかさえ微妙な情勢だ。市場の円高圧力に対抗するためには、介入規模をさらに大きくせざるを得なくなる可能性もある。

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[世界経済]

(1)リーマン2年、二極化世界(9/25) ***

2008年9月のリーマン・ショックから2年である。先進各国は、財政出動や金融緩和で危機を乗り切り、中国など新興国の成長を取り込む形で回復過程に入りつつある。だが、日米欧とも過去の負の遺産が重く、新興国にもバブルの懸念がつきまとう。

米証券大手のリーマン・ブラザーズの破綻から世界経済は冷え込み、09年の世界経済は戦後初めてのマイナス成長を記録した。先進各国は09年を財政出動や金融緩和でしのぎ、ギリシャ危機による今春の欧州金融不安も資金供給の緊急避難措置で何とか乗り切った。

この間に世界は大きく変わった。先進国が財政悪化や過去の負の遺産にあえぎ、低成長を余儀なくされる中、中国をはじめとする新興国は世界経済のけん引役すら期待される存在となった。

自動車市場で見ると、世界の構造変化がはっきりする。世界の自動車販売台数はリーマン・ショック後にピーク時に比べ15%落ち込んだが、10年1〜6月期には2年前と比べ同水準まで回復した。これを支えたのが中国で、同期の新車販売台数は2年前比7割増の約900万台となった。

国際通貨基金(IMF)によると、ドル換算した10年の名目GDP見通しは世界合計で61兆7800億ドルで、2年前に比べ5600億ドル程度増だ。先進国は7100億ドル減の41兆5600億ドルだが、新興・途上国は1兆2700億ドル増の20兆2200億ドルだった。

各国は新興国市場の取り込みに躍起で、世界で輸出が有利になるような通貨安競争も起きている。米国はもう強いドルを口にせず、金融不安を抱える欧州はユーロ安もあって輸出が好調だ。金融緩和措置が限られる日本は、結果的に円の独歩高を招いている。デフレ圧力が残る日本には、厳しい状況が続く。

世界経済はどうなるのか。ある論文では「過去の大不況から類推して、金融危機後の経済低迷は10年続く」との指摘があり、話題を集めた。背景にあるのが、日米欧の負の遺産だ。米国は、過去の過剰消費に伴う個人などの債務、欧州は金融システム不安、日本は構造的デフレ圧力が存在する。日米欧は、現段階で合計1兆ドルの需要不足(供給過剰)状態にあるとの試算もある。

特に、住宅バブルの崩壊などで打撃を受けた欧米は、日本の90年代に似て、実体経済と金融システムが負の相乗効果をもたらす懸念がある。

一方の新興国は、引き締め気味の政策に転じたとはいえ、中国などでは不動産バブルの恐れが消えない。投機マネーが流れ込む他のアジア諸国も危険は潜む。

先進国のデフレと新興国のバブルという逆方向の懸念を抱えながら走るのが、現在の世界経済だ。その顕在化した姿は、世界が単線的な成長に戻るわけではないことを示している。


 [EU経済]

(1)アイルランド、財政赤字拡大(9/12) ***

アイルランドが経営破たんした銀行への追加支援で、今年の財政赤字のGDPに対する比率が、従来予測の11%台から約20%に上昇する見通しとなった。緊縮財政にいち早く取り組んだ同国が逆風に直面したことで、ポルトガルなど他の赤字国への懸念が再浮上している。ユーロ圏の赤字問題が長期化の兆しを見せている。

アイルランドは、福祉手当や公務員賃金の引き下げなどで、今年の財政赤字の対GDP比は昨年の14%から11.5%に下がると見込んでいた。しかし、国有化したアングロ・アイリッシュ銀行への公的支援が急増した。この支援を政府債務に含めるかどうか欧州委員会と協議中だが、含めるとGDP比が約20%に上昇する。不動産金融専業のアングロ銀行は、09年1月に破綻し、国有化された。長期的な損失処理コスト予想は、当初の220億ユーロから250億ユーロに増加した。これだけでGDPの1割超だが、最大350億ユーロに膨らむ恐れがあるとする見方もある。

足元の景気は回復が続くとの見方が多いが、問題は景気ではなく不動産バブル崩壊で破綻したアングロ銀行の損失処理にいくら公的資金が必要か不透明なことである。そのため、国家財政悪化懸念で国債が売られ、ドイツ国債との利回り格差は約3.5%と、ユーロ発足以来の水準に拡大した。

これにより、赤字を抱える他の小国にも懸念は波及した。ギリシャやポルトガルの国債が売られ、利回りは、5月以来の水準に上昇している。