[国内財政]

(1)国の不適切処理、過去最大1.7兆円(11/6) **

会計検査院は、09年度の国の決算報告書をまとめ、菅首相に提出した。経理処理が不適切などと指摘したのは986件で、金額は約1兆7904億円だ。指摘金額は前年度比約7.5倍に増え、過去最高を大幅に更新した。

独立行政法人の鉄道建設・運輸施設整備支援機構に、旧国鉄から引き継いだ土地の売却益を原資とする約1兆2000億円の余剰金があることを指摘し、国土交通省に返納を求めたことが全体を大きく押し上げた。

特別会計についても、7会計12勘定で、08年度に一般会計から約1623億円が過大に繰り入れられていることも指摘した。


[国内金融市場]

(1)買い取り基金、本格稼動―日銀週明けから国債購入(11/6)

日銀は5日の金融政策決定会合で、国債や社債、上場投資信託(ETF)などを5兆円分買い取る「資産買入等の基金」の枠組みを決めた。週明けの国債を手始めに、買い取りを順次始める。リスクプレミアムの押し下げなどで企業の資金調達コストを抑え、デフレ脱却につなげる狙いだ。日米が量的緩和にそろって踏み出す。

日銀は来年末までに、国債1.5兆円、国庫短期証券2兆円、株価指数に連動するETFを4500億円、不動産投資信託(REIT)を500億円買い取る。ETFなどのリスクは、FRBが買い取る米国債の13倍だ。格付けが低い社債なども購入していく予定で、リスクを積極的に引き受けることで金額以上の緩和効果を狙うという。買い取り金額が米国に比べ小さいとの批判は根強いが、白川総裁は「道具の大きさではなく、達成される金利などの水準で評価すべきだ」と語った。

景気の減速感が強まる中で、企業や家計の心理が冷え込んでいる。政策金利がゼロに張り付いており、国民負担につながりかねないリスクを抱え込むという点で、財政政策に近い領域に日銀は足を踏み込まざるをえない。さらに、経済・物価情勢が悪化した場合には、「基金の規模拡大も有力な選択肢」になる。これにより、市場や企業の不安心理の広がりを未然に押さえ込もうという意図がにじむ。

日銀は、足元の景気判断を「改善の動きに一服感がみられる」として、景気が踊り場に入っていることを認めた。回復の起点である輸出や生産が横ばいとなり、エコカー補助金の打ち切りなどで個人消費も「駆け込み需要」の反動が見られる。景気の先行きリスクが高まるような事態になれば、日銀が資産買い取りの増額に動く可能性は高い。


[FTA]

(1)TPP交渉―守るだけの農政と決別を(11/1) ***

この機会を逃せば永遠に後悔する。そんなときが人にも国家にもある。環太平洋経済連携協定(TPP)交渉への参加もその一つだろう。

だが、農業関係者は早速反対している。食料の安全保障は大切だが、農家を守るだけの農政は競争力を弱め担い手を減らし、破綻した。自由化に耐えられる強い農業を作らなければ、日本人は永遠に後悔することになる。

脚光を浴びるTPPの基は、チリなど4カ国が始めた自由貿易協定だ。米、豪など5カ国が加わり今春に米中心に協定拡大・改定の交渉を開始した。無視できないのは、この地域で輸出・投資の拡大を狙う米国が主導する大経済圏になり得ることだ。カナダ、韓国も関心を示し、中国も情報収集に動き、日本も加わればEUも上回る規模になる。既存の協定なので、早く確実に実現する可能性がある。

また、関税撤廃の例外品目を厳しく絞るほか、知的財産権や競争政策なども含む中身の濃い協定となる。

経済圏は非情なもので、入らないと米国など参加国への輸出が関税分だけ不利になる。そのため、競争が激しい自動車業界などは生産拠点を参加国に移すだろう。

米政府は、来年秋の交渉妥結を目指す。早く交渉に加わらないと、日本の主張を反映できない。

米に限らず、小規模農家への保護は手厚い。保護は財政支援(納税者負担)と関税(消費者負担)からなる。日本は特に関税による保護が大きい。高関税による品目も多く、貿易自由化の妨げになっている。政治力で高関税を維持するようでは、グローバル時代には生き残れない。せめて関税による保護から財政保護に変える必要がある。

日本で食べる中国産米が値上がりし、日本米に近づいている。そのため、今のような高関税の必要性は薄れている。農地の集約を促すような所得補償方式に変え、減反もやめれば規模の大きな農家を中心に生産が増え価格が下がる。その結果、関税を撤廃できるだけでなく中国などに米の輸出を増やせる。内外価格差が縮小してきた乳製品も同じような方法を取れると見る。どんなに努力しても外国産にかなわない作物については、農家に転業を促す道もあろう。

ひたすら農家に甘いだけの農政では、農業の将来はないし、日本経済を窮地に追い込んでしまう。


[アメリカ経済]

(1)FRB、米国債6000億ドル購入(11/4) ***

米連邦準備理事会(FRB)は、追加金融緩和策を決定した。11年6月末までに追加的に6000億ドル(約49兆円)の米長期国債を購入し、市場に資金を供給する。保有する住宅ローン担保証券(MBS)などの元本償還分で国債を購入する措置も継続する。景気回復とデフレ回避に向け、新たな量的緩和に踏み切るとともに、必要に応じてさらなる緩和措置も辞さない構えを示した。  

事実上のゼロ金利の下で、追加の金融緩和策として長期国債の購入拡大という手段を用いた。08年秋以降、FRBはMBSや政府機関債などの購入を開始し、住宅ローン金利引下げなどのために購入を進め、FRBの資産は2兆ドルを上回る規模に拡大した。09年秋以降は購入を順次終了させた。しかし、景気の先行き不透明感が強まった今年8月に、FRBは一転して保有するMBSなどの元本償還金を米長期国債の購入に充てることを決めたが、この措置を継続する。来年6月末までの長期国債購入額はMBSの元本償還分と合わせ、8500〜9000億ドル規模になる見通しだ。FRBは、景気の二番底やデフレへの懸念が強まった際には、購入規模を増やすことを示唆した。

FRBは、雇用最大化と物価安定を政策目標に掲げているが、実体経済の改善は「失望するほど遅い」として、現状を脱する必要を強調した。