[FTA]

(1)環太平洋の多国間経済協定、外相参加に意欲(10/20) **

[先進国]

前原外相は、米国など9カ国が交渉を進める「環太平洋戦略的経済パートナーシップ(TPP)」への参加を検討する意向を表明した。経済連携協定(EPA)を推進し、国際競争力を強化する狙いだ。外相は、関税撤廃で影響を受ける国内農業の支援策が、参加の前提とも指摘した。

外相は、競争力に関して「韓国の法人税率は約24%、日本は約40%。法人税でみてもダブルスコアだ」と述べ、法人税率の引き下げが欠かせないとも指摘した。

菅直人首相は、11月のアジア太平洋経済協力会議(APEC)で、TPP参加を表明する方向で調整している。

外相は「私はTPPに入るべきだと思っている。国を開くことを本気で考えないと、日本の競争力は低下してしまう」と訴えた。同時に「韓国はEPAをする前提で、徹底した農業の支援策もやっている」とも述べ、国内の農業支援策が必要との認識を明らかにした。

TPPは、原則としてすべての品目の関税を撤廃する。首相も1日の所信表明演説で「参加を検討する」との意向を示した。


[EU経済]

(1)欧州、財政再建策出そろう(10/21) ***

英国が、14年度までの総額810億ポンド(約10兆円)の歳出削減を柱とする中期歳出計画を発表し、11年以降に欧州主要国が進める財政再建策が出そろった。財政を膨張させた金融危機対応から、欧州不安の再発防止へ市場の信認回復を優先した。ただ、社会保障費や公務員の人件費などが縮小し、欧州景気の回復速度が鈍化する可能性もある。

「スペンディング・レビュー」と呼ばれる英国の中期歳出計画は、今後数年間の歳出予算を縛る複数年度予算の機能を持ち、11年度以降の予算は毎年、同計画に従って議会に提出されることになる。これは、1980年代のサッチャー政権以来の大胆な財政再建の取り組みだ。

5月に発足したキャメロン政権は、GDPの10%を超える財政赤字を15年に1%程度へ減らす第一歩となる緊急予算を6月に発表した。日本の消費税に当たる付加価値税を11年1月に20%へ2.5%引き上げるとともに、歳出削減方針を示した。今回の中期歳出計画は、その具体策だ。

計画によると、6970億ポンドの歳出から、医療や科学技術、新興国支援など例外を除く各予算を平均で19%減額する。そして、公的年金の支給開始年齢を20年までに66歳に引き上げる。防衛や外交だけでなく、児童手当や教育関連の国民生活に密着した分野まで広く削減対象にした。また、公務員を14年度までに49万人減らす方針だ。一方で、英政府は、各分野で公的部門に変わる民間ビジネスが生まれ、雇用創出や中長期の景気下支えにつながると期待しているようだ。


[中国経済]

(1)中国、インフレ懸念で0.25%利上げ(10/20) ***

中国人民銀行(中央銀行)は、金融機関の貸し出しと預金の基準金利(期間1年)を20日から0.25%上げると発表した。金融引き締めで、国内のインフレ懸念に目配りする。市場金利を誘導する先進国型の金融政策が確立していない中国では、中央銀行が預金・貸出金利を直接操作する。今回の利上げで、期間1年の基準金利は貸し出しが5.56%、預金が2.50%になる。

利上げに踏み切った背景には、22日から韓国で開く20カ国・地域財務相・中央銀行総裁会議(G20)をにらみ、人民元を割安に抑える政策を批判する米国などに対応する狙いもあるようだ。

利上げの第一の理由は、インフレ懸念の台頭だ。8月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比3.5%上昇し、上昇率は政府が年間の抑制目標に掲げる3%を2ヶ月連続で上回った。9月は、食料品の値上がりでCPI上昇率は4%に近づくとの予測も多い。人民銀は、インフレへの警戒レベルを引き上げた模様だ。

不動産価格も再び上昇局面に入る兆しが出ている。9月に入り人民元の対ドル相場は、上昇ペースを速め、一段の元上昇を見込んで中国国内の不動産市場に大量の投機資金が流れ込んでいるとの声が多い。

これまでは、人民銀は利上げに慎重であった。利上げをすれば、米国などとの金利差が拡大し、中国への投機資金の流入に歯止めがかからなくなることも懸念材料であった。

一方、人民銀は11日、大手行を対象に預金準備率を引き上げた。当面は、預金準備率の操作を通じて、過剰流動性の吸収を進めるとの予測が優勢だっただけに、突然の利上げに市場関係者の間では驚きも広がっている。

(2)日本のバブル、中国が教訓に(10/21) ***

中国人民銀行が20日実施した利上げは、日本のバブルを研究した結果との見方が出ている。不動産価格の上昇を放棄すれば、景気の長期低迷に悩んだ日本の失敗を繰り返すとの危機感が当局内で高まっている可能性がある。

中国では日本のバブルについて、「大蔵省(当時)が低金利の維持による景気刺激を日銀に迫ったため生まれた」などとして、金融政策を中心に対応に誤りや遅れがあったとの認識が浸透している。

一方、今回の利上げは、幅が初めて0.25%となった。人民銀は、これまで原則として0.27%刻みで基準金利を変更してきた。先進国の中央銀行で主流の0.25%刻みを採用することで、「中国の金融政策を国際標準に近づけた」との声も出ている。