[財政]

(1)5兆500億円の経済対策、閣議決定(10/8日経) **

政府は8日の閣議で、10年度補正予算案に盛り込む「円高・デフレ対応のための緊急総合経済対策」を決定した。対策は、5兆500億円だ。地方の公共事業財源などに使える約3500億円の地域活性化交付金の創設や、希土類の安定確保策を盛り込んだ。

新卒者就職支援策や中小企業の資金繰り対策などで、雇用や景気の下支えも狙う。

中小企業向け融資が焦げ付いた場合の保証枠なども合算した対策の事業規模は、21.1兆円程度だ。経済対策を盛り込んだ今年度補正予算案を、開会中の臨時国会に提出し、会期中の成立を目指す。

対策は当初1.3兆円の地方交付税の増額分も含めた4.8兆円規模としていた。財源には10年度の税収見積もりからの上振れ分の約2.2兆円や、国債利払い費の不用分の約1.4兆円などを充てる方針だ。これに、来年度予算で実施する公共事業などを前倒しで契約する国庫債務負担行為などで2500億円が上積みされた。

今回の対策は、公共事業や中小企業対策による雇用創出や、医療・介護・福祉分野への支援策などが柱だ。


[金融市場]

(1)日銀4年ぶりゼロ金利(10/6日経) ***

日銀は、5日の金融政策決定会合で、政策金利を現在の年0.1%から「0.0〜0.1%」に引き下げ、ゼロ金利を容認する追加金融緩和を決めた。ゼロ金利は、06年7月以来で、1%程度の物価上昇が見通せるまでゼロ金利を継続する。いわゆる時間軸政策でインフレ目標に近いが、資産価格の高騰のリスクが高まった場合には、日銀は柔軟に政策対応するとしている。国債や社債など5兆円規模の資産の買い取りも決定した。今後は金利だけでなく、資産の買い取り量なども政策の目安にし、デフレ脱却に向け市場に潤沢に資金を供給する量的緩和に踏み出す。

日銀が追加緩和を決めたのは、海外経済の減速や長引く円高で景気回復が鈍り、日銀の想定よりも成長率や物価が下振れするリスクが高まったためだ。

白方総裁は「短期金利の低下余地が限界的な状況を踏まえ、金融緩和を一段と強力に推進するため、長めの市場金利の低下などを推進していく」と説明した。ゼロ金利により、円高阻止と景気下支えに取り組む姿勢を示した。金利の一段の低下を容認することで、より潤沢な資金を市場に供給できるようになり、量的緩和が進めやすくなる。

また、会合では、資産買い取りのための新たな基金の創設について、日銀内で具体策の検討に入ることを決めた。低利で長めの資金を貸し出す既存の固定金利オペ(総枠30兆円)も基金に統合し、規模は35兆円程度とする。この基金の規模が金融緩和の目安となり、日銀は必要があれば規模拡大を検討する。

資産は、今後1年かけて買い取り、期間が1〜2年程度の金利を幅広く押し下げることを狙う。買い取り額は長期国債と国庫短期証券が3兆5千億円、資産担保コマーシャルペーパー(CP)と社債などが1兆円だ。また、初めて上場投資信託(ETF)や不動産投資信託(REIT)も購入する。

株や不動産を間接的に買い取ることで、資産市場にお金が流れやすくする効果を狙うが、日銀の財務が悪化するリスクもはらむ。白川総裁は、中央銀行として異例の措置と強調し、今回の決定について日銀の政策総動員による包括緩和と位置づけた。


[中国経済]

(1)中国、資源テコに技術要求(10/4日経) ***

「中東に石油あり。中国にレアケース(希土類)あり」。18年前、中国の最高指導者だったケ小平氏は、南巡講和でこう語った。天然資源を武器に使う戦略的な発想は、中国外交の根幹にある。尖閣諸島問題の中で見えにくいが、中国が対日圧力をかける狙いの一つは、日本企業からの技術の吸い上げだろう。

ハイテク製品の国産化を急ぐ中国は、こんなシナリオを描いていたのではないか。希土類の輸出を絞れば、電子、機械、化学、ガラスなど幅広い分野で、日本企業の生産が立ち行かなくなる。高機能・高性能の国産部品の上に成り立つ自動車、電機メーカーは音を上げるに違いない。事実、希土類の輸出規制が表面化した今年夏から、生産拠点の中国への移転を決める企業が相次いだ。住友電工とフジクラは、光ファイバーを作る中核素材の量産を決断し、三菱樹脂は薄型テレビに使うフィルムの現地生産を始める。

大手電機メーカーの首脳は、中国高官との面談後に「一方的に要求を伝達するだけで、こちらの言い分には耳を貸さない」と漏らした。要求とは、日中合弁企業の下に研究開発センターを設け、日本から技術者を派遣することだ。つまり、技術移転だ。

13億人の巨大市場は、捨てがたい。一方で、競争力の源泉である最先端技術を手放すわけにはいかない。迷っているうちに、米欧や韓国、日本の競合他社に現地生産や販売の許認可を中国側は与えるかもしれない。このジレンマの中で、希土類の輸出制限や通関手続きの遅滞は、企業の焦りに拍車をかける狙いがあったとも解釈できる。