[アメリカ経済]
(1)米雇用、民間は力不足(6/5) **
米労働省の雇用統計では、非農業部門の雇用者数が前月比43万1000人となった。しかし、増加の大半は政府部門の一時要因によるものだ。米経済は緩やかな回復が雇用に波及してきたが、民間部門はなお力強さを欠いている。失業率も9%台後半で推移しており、金融危機の影響は色濃く残っている。
5月の雇用者数の増加は、10年に1度の国勢調査を政府が実施するために、大量の臨時スタッフを雇用した影響が大きく、これを除くと、雇用者数は2万人の増加にとどまる。
5月の失業率は9.7%に低下したが、80年代前半以来の高水準にあることは変わらない。今年1月からの雇用者数の増加は、合計98万2000人となったが、08〜09年の間に雇用者が約840万人減少しており、やっと1割強を取り戻したにすぎない。
長期失業者(失業期間が27週間)の割合も、46%に達しており、深刻な問題になりつつある。
一方、欧州の財政悪化危機による株式市場の動揺が、個人消費を下押ししかねないほか、ドル高・ユーロ安で米企業の輸出競争力が低下するとの指摘もある。さらに、米国自身も財政赤字が膨張しており、今後の財政政策には制約がある。
[EU経済]
(1)ギリシャ危機の教訓(5/31) ***
ギリシャへの支援決定後も欧州の金融混乱は、むしろ深まっているように見える。日本も安全地帯ではなく、ケタ外れの公的債務というアキレス腱を抱えた経済は、ひとたび国際的な投機にさらされればもろいはずだ。財政の健全化計画は、もはや時間との問題になってきた。
国際通貨基金(IMF)は、19日のレポートで「欧州での公的債務に対する市場の信頼喪失は、・・・日本の長期金利の上昇につながる。成長率は低下し、デフレは長引き、財政はさらに悪化する」と警告した。
今回の欧州危機で、日本国債は安全資産と見られ買われている。95%を国内で保有しているからで、南欧諸国とは違う。しかし、何かのムードで市場は一変する。日本は、公的債務がGDPの1.8倍と先進国で最悪の上、政治指導力が弱く改革が進まない点でギリシャと同じと見始められているという評価もある。それほど切迫していないにしても、数年内に低利での国債消化は難しくなると債券専門家はみている。
特に、15年には団塊の世代が65歳になり貯蓄の取り崩しを本格化させるので、国債消化は転機を迎えるという予想もある。
一方、政権の構えは実に悠長だ。国と地方の赤字のGDPに対する比率を昨年度の10.7%から、いつごろ目標の3%に下げるかについて、政府幹部は20年代の初めになると打ち明ける。年々の赤字削減はGDPの1%分(5兆円弱)よりよりかなり小幅にせざるをえないからだそうである。ちなみに、米国は赤字幅を念にGDPの1.4%分ずつ、英国は1.7%分ずつ減らす方針だ。
破綻の危機に直面したギリシャは、付加価値税(消費税)の増税や年金の支給開始年齢の引き上げを含め、5年間にGDPの11%分、年平均で2.2%分の赤字圧縮を決めた。日本の経済規模でいえば、年々約10兆円程度の赤字減らしだ。日本もいずれこの程度の赤字減らしが必要になるだろう。早目に手をつけるほうがよい。
さて、成長率が高くなると、税収が伸び財政再建が進めやすくなるため、成長戦略は大事だ。しかし、その中身は心もとない。今の日本で大事なのは、法人税の軽減や労働規制の緩和などで、企業の生産基盤を国内に残すことだ。政府が派遣労働の規制を強めるのは逆効果だ。
国民のためにも、経済大国の責任としても、政治化の「ケセラセラ」は許されなくなっている。
[中国経済]
(1)中国は市場経済か(6/4) ***
ロック米商務長官は、中国政府が貿易上の不利な措置を避けるために米国に打診している「市場経済国としての認定」に関しては、人民元切り上げなど課題が多いと指摘した。認定は当面は困難との認識を示した。
市場経済国認定は、世界貿易機関(WTO)のルール上の位置づけだ。同長官は、中国がドル相場に事実上固定している通貨制度の改革に加え、特定産業の生産活動を国が管理しているかなどの基準に合致することも必要として、認定には時間がかかるとの考えを示した。
対中政策については、国産品を政府調達で優遇する中国の政策については、「少し修正したが、外資系企業に対する差別的な待遇になお多大な懸念を抱いている」と同長官は述べた。日本などと共同して、中国に追加の修正を求めたい考えだ。
市場経済国認定:かつての社会主義国のように政府が生産活動や為替を強く統制してきた国を、世界貿易機関(WTO)の規定では、「非市場経済国」と位置づけ、貿易相手国がダンピング(不当廉売)認定や課税率算定を厳しくすることを認定している。中国製品への反ダンピング課税が頻発しているため、中国政府は貿易上の不利な扱いを受けない「市場経済国」としての早期の認定を、米国や欧州連合(EU)に求めている。